大人の正しさと、少女の目の前にある痛みを両方許す癒やしの寓話——「屋上の君」(瀬川藤子)

32歳、このところ年を取ったなと痛感することがある。もちろん大人としてはまだまだひよっこという年齢で、老人ぶるような年ではない。だけど、そういうのとは無関係に、だんだん昔のことを忘れはじめている自分がいる。

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「愛の才能」とは何なのか? 川本真琴と思春期のピュアネスをめぐって——「17歳℃」(麦盛なぎ)

純愛路線が花盛りになった00年代以降、中学生、高校生の恋物語は数多く描かれているが、思春期の恋模様をきちんと描く作品は、実はあまりなかったと思う。何年か前からここを描いてきたのが「溺れる花火」「ヒメゴト~十九歳の制服~」の峰浪りょうであり、近いところをめぐっているのが「惡の華」の押見修造だろう。そして、今、新たに現れたのが「17歳℃」の麦盛なぎだ。

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不幸が悲劇になる、ほんの少し手前で――「ないしょの話〜山本ルンルン作品集〜」(山本ルンルン)

山本ルンルンというのは、実に絶妙な名前だと思う。“ルンルン”という底抜けに明るい響きと、メルヘンチックでキュートな絵柄が、甘い物語を予感させると同時に、名前としてはあまりに不自然なフレーズと可愛すぎて生々しさがない絵柄がある種の不穏さを予告する。そして、その予感のとおり、寓話的でキュートな物語は、常にどこかに毒気を持っている。

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