「犬神もっこす」(西餅)
シュールさ:
予想外さ:
ほんのりヒューマン:
「アスペルガー症候群」は、いまやネットではかなり知られた疾患になっている。発症すると、他人の気持ちを理解したり、空気を読むことができず、人付き合いが苦手だったりといった傾向がある疾患ということで有名だ。本作の主人公である犬神くんが、いわゆるアスペルガー症候群に当たるかはわからないが、彼はまさに人の感情の機微がわからないタイプ。苛められたり、疎まれたりしていたことにすら本人がまったく気付いていないくらいだ。他人の感情に鈍感というより、理屈っぽくそもそも自身の感情の振り幅自体が小さい。そんな彼が、大学で演劇サークルに入って人の感情を表現することに挑むドタバタコメディが本作だ。
まぁ、これがすごい。何しろ犬神くんの行動がまったく予測できない。特に実際に演劇が始まってからは予想外の連発。彼が所属する演劇サークル自体「ビルマの竪琴」ばかりやっている変わったところだが、犬神くんが劇に加わると完全に劇が崩壊し、感動ドラマのはずの「ビルマの竪琴」がいつの間にかシュールなコントに変わっていく。そんな超変わり者の犬神くんに笑わせられっぱなしの本作だが、感情の乏しい彼が、なぜかふととても人間らしく見える瞬間があったりするのが、また不思議な味わいを生んでいる。
【ここにも注目!】
本人はいたってまじめなつもりの犬神くんがかますボケが本作のキモだが、演劇サークルの面々のツッコミの鋭さも魅力。的確にツッコんでいくスキルの高さがまた笑いを誘う。
(本レビューは第1巻時点のものです)
記事:ネルヤ編集部
関連リンク
モーニング公式サイト – 『犬神もっこす』作品情報
No comments yet.
この記事にコメントする