16日夜、マンガ家を中心にマンガにおける「画力」の話題が盛り上がりを見せた。
きっかけとなったのは、普段からデビュー前の投稿作家らに向けてのアドバイスやマンガ論を展開していることで知られる、別冊少年マガジン公式アカウントの“班長”氏による一連のつぶやき。持ち込みなどを行ってもなかなか賞を取ったり担当がついたりするところまでたどり着けず悩んでいるデビュー前の新人に対して、「(デビュー前の新人作家が)賞に入らない理由の9割は「画力」です」という見解を示した。
「画力があるのに、担当すらつかない、賞にもまったく入らないということはありません」といったつぶやきが続くため、「マンガにおいてもっとも重要なの要素が画力」という主張と受け止めたユーザーも多かったようで、TLからはさまざまな反応や反論が寄せられていた。
これに対し、班長氏は今回の話があくまで「新人作家さんオンリーに向けた話」と再度説明。「漫画の面白さは画力が大部分をしめる」ということでも「少年漫画は画力を重視している」ということでもなく、「新人作家さんは、自身が思っているよりも画力が足りない」という意味であるとコメントしている。
班長氏が取り上げているのは、“新人賞に送られてくる(そして賞に入らず落とされる)多くの原稿”の話だが、こうした原稿は読者の目に触れることがないため、実際にどのような絵の作品について「画力不足」と指摘しているのかが、一般読者、マンガ家志望者などには理解しにくかったことが誤解を生んだ部分もありそうだ。班長氏は「皆さんが目にしている作品の中でも、読者さんが一番へただと思っている絵」が「月」だとした場合に、今回話題にあげたような新人賞への応募作の多くは「今はまだスッポンの子たち」であり、そうした作家らが「プロジェクトXとしか思えないくらい、僕たちに感動を与えてくれたりする」ようになるのを数多く見てきたと付け加えている。
この話題は、プロのマンガ家らにも波及。「画力」とは何なのかについて、多くの作家が言及している。
ゆうきまさみ氏は、松田未来氏の「「画力」って言葉がすごい曖昧」「僕は説得力だと思ってるんですけどね」というつぶやきを受け、「「説得力」と言うとすごく大層なことに思えるかもしれませんが、要はキャラクターが「いつどこにいて何を思って何をしているのか」が明解であるということ。漫画で求められる「画力」というのはそこからスタートなんだと思います」とコメント。別マガ・班長氏もこの発言を引用して、「全く、その通りだと思います」と語っている。
「34歳無職さん」などの作品があるいけだたかし氏は「漫画描いてると「ここに入れなきゃいけない絵」を描かないといけなくなるのでそれを描けるようになって下さいねって話だろうな」と語り、「んで「画力ない人」ってその入れなきゃいけない絵が見えてないので読みにくい」と指摘している。同じように、イシデ電氏は「漫画の絵なんて、何描いてあるかがわかればいいんだよ、と思う」とした上で、「何が描かれているのか、ちゃんと伝わるように描く難しさに苦しむわけなんだけど」と、表現したいことを絵にすることの難しさを語っている。こうした一連のつぶやきは、いわゆる美麗な絵を描けるという意味での「画力」というよりも、表現を的確に絵にする能力としての「画力」についての話といえるだろう。
このほか、別冊少年マガジンで「スライムさんと勇者研究部」を連載中の我孫子祐氏は、かつて持ち込みにいった際に画力にダメ出しされ「もう2度とこの編集部に持ち込み行くか!とか思ったことありますね」と明かしている。「今思えば、自分の漫画の話とかキャラとかにはものすごい自信があって、面白さに画力なんて関係ないじゃん!って思ってたからで」と分析し、「今の自分から見たら全てにおいてダメダメな漫画なんで、そんなこと考えてうぬぼれてたことに顔から火がでそうになります」「画力のせいにしていろんな壁から逃げてたのは自分のほうだったんですよね」と当時を振り返っている。
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