マンガ原作なども手がける編集家・竹熊健太郎氏が、高額賞金を掲げるマンガの新人賞の登場に触れ、マンガ家のデビュー、発掘に対する持論を展開している。
話のきっかけとなったのは、大賞賞金が1000万円を超えるような高額賞金が設定された新人賞。近年だと09年にスタートした宝島社の「このマンガがすごい!」大賞は、賞金総額1100万円(第4回の場合、1位受賞で500万円)を用意。現在作品募集中のアスキー・メディアワークス電撃コミックジャパンによるデジタルMANGA新人賞は、グランプリ受賞で合計1200万円の賞金が贈られる形になっている。
大手出版社の伝統的な新人賞を見ると、集英社の手塚賞、赤塚賞で入選賞金(副賞)は200万円、講談社・少年マガジンの新人漫画賞は特選で100万円。小学館の新人コミック大賞は大賞200万円の上に、賞金500万円の特別大賞が設定されており、賞金としては高めといえるだろう。こうした新人賞は、必ずしも毎回大賞作品が出るわけではないが、賞金以上に大手雑誌でのデビューへのきっかけになりやすいという点が大きな魅力だ。
新人賞金の高額化について竹熊氏は「新人が一番求めているものは、高額な賞金よりも、作品と才能に対する「正当な評価」ではないかと思うのですが、いかがですかね。」とコメント。長期連載作品が増加しており、新規読者も入って来にくいマンガ雑誌で新人が台頭する土壌はどれくらいあるのか、というユーザーからの問いかけには、「今の状況では厳しい」とし、「だから皆同人誌に流れる」と分析している。
その上で、竹熊氏はデビュー前の新人の心得として、「投稿や持込みは「営業」であって受験でも就活でもない。」、「「私の才能を評価してください」ではダメです。「才能があることは前提」で、版元はあなたの“売り”が知りたいのです。」と語る。
「業界に作家を「育てる」余裕はありません。」というのがその大きな理由。加えて、「私は、これから作家デビューは30代以降が主流になると思います。独力で「育つ」には、最低その位かかると思うからです。」と今後の新人デビューの潮流を予測している。
また、同時に新人賞を設定する出版社サイドに対しても「賞金1千万だすのなら、いっそ「新人賞」なんてやめてしまい、代わりに「連載企画大賞」を設置し、プロアマ問わず、連載を想定した第一回の完成原稿と、単行本1冊分のネームを応募してもらって審査する」というスタイルを提案。育てる余裕がなく、即戦力を求めるのであれば、「円熟したベテラン作家とこれからのし上がってやろうと野心を燃やす新人が同じ土俵に乗ってガチンコで競い合う」ことで活性化を図るのではないかとコメントした。
ちなみに、氏の提言があったのかは不明だが、竹熊健太郎氏も第1回の審査員として関わっていた「このマンガがすごい!」大賞は現在、プロ・アマを問わず作品を募集しており、大賞以外の入賞作もそのまま単行本化されるという形をとっている。
出版社が運営するWebマンガサイトも増え、デビューのチャンネル自体は多様化傾向の現在、マンガ家の発掘・デビューがどう変わっていくか確たる予測は難しいが、プロデビューを目指す人は氏の持論を参考として知っておくのもいいだろう。
なお、一連のやりとりについては現段階で4日のものまでがtogetterにまとめられている。
記事:ネルヤ編集部
関連リンク
『このマンガがすごい!』大賞
最強のデジタル新人マンガ賞登場!! | 電撃コミック ジャパン
漫画賞|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト shonenjump.com
マガメガ|週刊少年マガジン|新人募集|講談社コミックプラス
小学館コミック -新人コミック大賞-
正当な評価とは何か 〜新人が真に求めるもの〜 – Togetter
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