コメディっぽさとシリアスさが上手に融和した学園ストーリー——「きみのとなり」(チェリー)



「きみのとなり」(チェリー)
ギャグっぽさ:★★★★☆
 切なさ:★★★★☆
静かな友情:★★★★☆

絵に描いたようなボロアパート、山盛りごはん、滝のように流れる鼻血などなど、本作にはいかにもマンガという表現が多用されている。「幽霊が見える」という主人公・四ッ谷くんの能力や暗〜い性格もあって、各エピソードはどれも序盤はゆるい学園コメディ的な展開がつづく。だが、軽い読み味の先に待っているのは、孤独と再生の物語だ。コメディっぽく見える四ッ谷やその周囲の人々は、物語のなかでふと胸の内に抱える寂しさや後悔を垣間見させる。普段はむしろ楽しげに描かれているだけに、その孤独が見える瞬間はいっそう鮮やかだ。

彼らの痛みは、幽霊やさまざまな人々と出会いのなかでも、決して根治するわけではない。だが、四ッ谷は、物語のなかでその傷みや心を打ち明けられる相手に巡り会う。それは何かを解決することにはならなくても、彼を、そして胸の内に小さな痛みを抱える僕らを、ちょっとだけ救ってくれるのだ。

【ここにも注目!】
第1話で出てくる、差し入れの巨大おにぎり。とりわけ凝ったメニューではないし、むしろ作中でも「まずいから」と注意されているのだけど、これが妙に食欲をそそる……! マンガっぽい感じが魅力的なんだよなあ。

(本作は1巻完結です)

記事:ネルヤ編集部

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