法制度をモチーフに、法が救えぬ心を描く——「理不尽のみかた」(柳原望)



「理不尽のみかた」(柳原望)
法律うんちく度:★★★☆☆
コメディ度:★★★★☆
ハートフル度:★★★★☆

法律は理不尽な出来事が理不尽なままにならないように取り決められたルールだ。だが、では理不尽な目にあったら、必ず法が救ってくれるかというと、そうはいかない。確かに法律は一方的な理不尽が起こったとき、その原因となる相手を裁き、不利益を回復しようとしてくれる。だが、世の中の大抵のトラブルというのは、片方だけでなく、双方が「理不尽だ」と思っているときに起こる。つまり、互いに「相手が悪い」と思っているから、介入が必要になるのだ。そして、だからこそ、法律によるジャッジが下っても、納得できない人が出てくる。

検察審査会という、聞き慣れない法制度をモチーフにした本作は、法律モノではあるけれども、法律で何かを解決していく物語ではない。検察審査会に持ち込まれる事案や、そこで働くバツイチのアラサー女性・縁の巡り会う理不尽を通して、法律では救えなかった想いと、その向き合い方を描いている。美形だけどオタクなヘンテコイギリス人など、一風変わっているけれど心優しい登場人物たちの人柄も相まって、理不尽からフッと救われるような気持ちにしてくれる作品だ。

【ここにも注目!】
主人公・縁が働いている検察審査会というのは、検察が不起訴(=裁判を行わない)とジャッジした事件について、そのジャッジが正しいかどうかを審査するシステム。不起訴という判断が不当だという申し立てがあったときに審査が行われ、“裁判員裁判”同様、選挙権を有する国民から選ばれた11人の審査官がジャッジを行うというものだ。知名度は低いが、1948年の制度スタート以来、50万人以上の審査員が参加し、15万件にも及ぶ事件が審査されているとのこと。

(このレビューは第1巻時点のものです)

記事:ネルヤ編集部

関連リンク
理不尽のみかた 1|白泉社(試し読み)
Silky Web

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