史実の無駄遣い! 正史系なのにクズだらけの三国志——「漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん」(末弘)



「漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん」(末弘)
史実度:★★★★½
フィクション度:★★★★★
バカ:★★★★★

日本の三国志マンガというジャンルは、まず「三国志演義」(をもとにした吉川英治の「三国志」)ベースの“横山三国志”があり、その後「蒼天航路」のヒットで魏を中心にしたいわゆる正史への注目度が急激に上がった。本作「しばちゅうさん」も、そういう正史ブームの流れのなかから出てきた作品のひとつといっていい。諸葛孔明のライバルで、後期の魏の中心人物である司馬仲達を主人公にした作品なのだが、その情報量はなかなか凄まじく、1話9ページほどの間に、毎回史実からの注釈が大量に入れられている。コマ外が文字だらけのページも珍しくないほどだ。

とまぁ、これだけしっかりとした史実情報をベースにした本作が、どんな斬新な司馬仲達、三国志像を提示しているかというと、うん、まぁ、一言でいうと、クズ。全員クズ。司馬仲達は、働きたがらないほぼニートだし、 その君主・曹丕も性格の悪い口だけ坊ちゃんだし、挙げ句の果てに孔明は何かロボっぽいものまで作ってるしと、これだけ史実をベースにしているのに、まったく史実じゃないところに落とし込んでいる。また、どいつもこいつもゲスい表情をしているのがイラッときてたまらない。素材の味を無に帰す、クレイジーソルトのような味付け。まさに情報の無駄遣いという感じの贅沢なバカ歴史ギャグだ。

【ここにも注目!】
とにかく史実小ネタと注釈が多い本作だが、曹丕が出した「蜀では肉の味が薄いので、ハチミツをかけて食べているそうだ」という詔勅について「だから何で曹丕はそれを詔勅で言うの?」など、注釈もちょいちょいツッコミが厳しい。

(このレビューは第3巻時点のものです)

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