俺マンは個人的に毎年5本というルールで選定しています。基本的に今年刊行開始された作品を中心に。
今年はとにかく別マ作家の層の厚さを見せつけられる1年だったけれど、なかでも一際心に刺さった短編集。かわいくて、純真で、センチメンタル。
反響の大きさから賛否はあったものの、デビュー作にしてこの構成の鮮やかさと完成度の高さは圧巻。テーマや物語を含め、少なくとも僕にとっては間違いなく特別な作家であり、特別な短編集だった。
結婚を控えた娘とその家族の日々を丁寧に描いた作品。当たり前の日常が永遠ではなく、いつか卒業していく風景であることを、愛らしくあたたかく見せてくれる。
村社会と禁忌、民間伝承といった舞台設定だけでも十分迫力があるが、その上で徹底的にひと組の夫婦の絆が物語の中心にある。派手ではないけれど、キュートで魅力的なキャラクターが何よりの魅力。
多くのトリックスター的な才能のなかでも、「ホクロからレーザーが出る」というどう考えても出オチな設定で1冊まるごと最高にスリリングに、バカらしく描ききっている力量は凄まじい。笑えるのに、不思議な感動すら覚える。
それから、複数の作家が参加した単行本ということで、本選5作には入れなかったが、今年を代表する1冊として「僕らの漫画」には個人的に特別賞を贈りたい。東日本大震災のチャリティーとして立ち上げられたものでありながら、あえて震災そのものをテーマにせず、ひたすら1冊のマンガ本であろうとする姿勢は、マンガのひとつの正しい姿だったんじゃないかと思う。そして、そういう理屈より何より、「僕らの漫画」は面白いマンガだった。