物語の少しだけ外側にある理由――「春山町サーバンツ」(朝倉世界一)

「入り口があって出口がある。大抵のものはそんな風にできている」。「1973年のピンボール」(村上春樹)の有名な一節です。作中でも「出口があればいいと思う。もしなければ、文章を書く意味なんて何もない」と書かれているとおり、入り口を描いてしまったからには物語は万難を排して出口に辿り着かないといけません。

謎という入り口があれば、物語は必ずそれを解き明かさなくてはいけないし、涙や笑顔という感情の出口があれば、物語はその理由、入り口を物語のなかで描いていなければなりません。入り口と出口、そのすべてを物語のなかに閉じ込め、描ききる。それは物語の宿命であり、義務であるといってもいいでしょう。

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