キーワードは「恋」と「木炭」、そして「忍者」! シュールかつどこか切ない唯一無二の世界観――「そよそよ」(朝倉世界一)



「そよそよ」(朝倉世界一)

シュール感:★★★★½
キュートさ:★★★★½
センチメンタル:★★★★☆

三題噺というものがある。3つのお題を組み込んで、即興で話を作るというやつだ。たいていの場合は3つのキーワードに脈絡がないので、うまくまとめるのが難しい。たとえば、「恋」「木炭」「忍者」の3つで話を作れといわれたら、たいていの人はお手上げだろう。木炭まではともかく、「忍者」は厳しい。少なくとも現代劇で組み込むのはけっこうつらいし、まして「それで面白いものを」というのはハードルが高い。

が、その3つをキーワードに見事に面白い作品を仕上げている作品があるのだ。そう、本作「そよそよ」だ。幼なじみの男女3人が織りなすベッドタウンの恋と生活の物語なのだが、その世界観は朝倉世界一ワールド全開。ヒロインの菊田さんの実家はパンダやらカッパやらの形をした“おしゃれ木炭”を開発する不思議な燃料店だし、幼なじみ3人は子どもの頃から吹き矢教室に通っていて、吹き矢の大会などにも参加している。さらには、3人組のひとりで、世界的俳優になっている鬼灯くんは、どうもなんだか忍者っぽい……。これだけシュールな設定のオンパレードでは、普通はギャグにしかならない。実際、本作はシュールなおかしみに満ちている。だけど、それでいてキュートでちょっと切ない恋と友情の物語であるところは外していない。ちゃんと少女マンガをやっているのだ。言葉にできない唯一無二の朝倉世界一ワールドをたっぷり堪能できる1作だ。

【ここにも注目!】
幼なじみ3人と、地元に戻ってきた若社長の恋模様を中心に進む本作だが、同時にテーマになっているのが家族、親の問題。それぞれが社会人として自立しつつ、家庭や親の存在に縛られたり、囚われたりしている様子が描かれており、今後さらに中心テーマになっていきそうだ。

(このレビューは第1巻時点のものです)

記事:ネルヤ編集部

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