27日夜、一部の書店系アカウントなどを中心に「スリップ」についての議論が行われた。
「スリップ」とは、書籍やコミックに挟まれている短冊形の紙で、出版社に売れた本の追加発注を行うなど、いくつかの役割がある。そのため、書店で本を購入した際に抜き取られ、書店で管理されるのが一般的だ。
だが、近年では書店における本の追加発注などはオンラインが一般化しており、発注用紙としてのスリップの役割は終了しつつある。
こうした状況のなか、昨年頃から店頭に並び始めたのが、版元による包装済みのマンガだ。現時点では講談社のいくつかの作品で見られるもので、バーコードのシールが貼られたビニール包装が行われた状態で店頭に届いている。編集部で確認したところでは、「Eから弾きな。」(佐々木拓丸)や「なりひらばし電器商店」(岩岡ヒサエ)などがこれに該当する作品だ。
版元によってビニール包装が行われるケースは、一部特装版コミックなどで散見されるが、通常の単行本で行われているのは、現時点では珍しい試みだ。
書店がビニール包装を行う手間も省けるなど、メリットも大きいが、今回改めて議題に上がったのは、版元包装済みのコミックにおけるスリップの問題だ。講談社の包装済みのコミックの場合、完全密閉の形を取っていることもあってか、スリップが入っていない。前述のとおり、すでに発注用紙としてのスリップの役割が事実上終わりを迎えていることもあっての対応といえるだろう。
だが、一方で書店によっては追加発注には使用しないものの、まとめておくことで「どの作品をどの作品といっしょに買ったか」といった売れ行きの確認に使用しているケースがある。スリップがなくなることで、こうした作品の動向チェックに支障をきたすという声があり、改めてスリップ必要論が上がったというわけだ。
もちろん、現時点でもPOSデータで販売数や会計単位での購入ラインナップなどは確認可能とのことだが、店頭に立っている時間が長い書店員の場合、わざわざPCを立ち上げて確認しなくてはならなかったり、重いシステムの反応を待つよりも、空き時間に手元で気軽に確認できるスリップを重宝する向きもあるようだ。
スリップは、そのまま処分している書店もあるように、本来的な存在意義が薄れており、業務の中心はオンライン発注などのシステムへ移行しつつある。だが、書店によってはまだまだ存在感があり、必要とされている様子がうかがえる議論だった。
記事:ネルヤ編集部
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