王子もマドンナもいないし、派手なドラマもない、だけど甘酸っぱい日常系ラブコメ――「鈴木さん」(ヤマダ)



「鈴木さん」(ヤマダ)

ギャグ:★★★½☆
甘酸っぱさ:★★★★☆
日常系:★★★★½

ラブコメは特別な夢を見させてくれる物語だ。一昔前の男性ラブコメなら相手は「学園のマドンナ(死語)」だったし、少女マンガならみんなの憧れを集める「王子」キャラが中心になっている。要するに物語としての恋愛はドラマチックでアッパーな出来事なのだ。そういうラブコメに対して、日常系の恋愛と呼ぶべき作品がここ数年のトレンドのなかにある。「鈴木さん」はそんな日常系恋愛の遺伝子をきっちり受け継ぎ、まとめ上げた作品だ。

話したこともなかった、クラスメイトの鈴木さんの意外な一面を知った佐藤くんが、ゆっくりと彼女に惹かれていく様子を、ギャグっ気たっぷりに描く本作は、ドラマチックさとは無縁だ。もともと個人サイトでの掲載作だったということで、話も恋愛だけに集中しているわけでなく、佐藤くんの周囲のキャラクターの日常ギャグ回も多い。ラブコメというより、恋愛要素もある青春コメディといった感じだ。だけど、そのドラマの小ささはむしろ青春時代の恋心をうまくすくい上げている。ある日突然降って湧いたように訪れるドラマでなく、気付くと意識しているような、何気なくて、だけどくすぐったいような特別な相手の発見が、そこにはある。「鈴木さん」という、特別感のないヒロインの名前は、そんな何気ない恋の感覚を描き出す本作を象徴するタイトルになっていると思う。

【ここにも注目!】
日常系エピソードの積み重ねではあるが、登場キャラクターはギャグ系の個性派揃い。日常学園コメディが好きな人にもオススメだ。あと、ヒロイン勢がややSッ気が強いのがいいですね。躊躇なくぶん殴ってくる感じがね!

(このレビューは第1巻時点のものです)

記事:ネルヤ編集部

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