追体験でなく、再発見で日常のキラキラを描き出す、ハートフル哲学ストーリー——「すみっこの空さん」(たなかのか)



「すみっこの空さん」(たなかのか)
癒やし:★★★★☆
かわいさ:★★★★☆
発見感:★★★★☆

よく「子どもの頃の世界はキラキラと輝いていた」といわれる。「よつばと!」(あずまきよひこ)あたりは、それを物語化した代表例だろう。本作、「すみっこの空さん」も、子どもの頃の、世界の不思議な輝かしさを物語に下ものだが、読み味や切り口は「よつばと!」とはちょっと違う。

「よつばと!」は、小岩井よつばという少女の視点で、日常をもう一度“初めて”の連続にすることで、世界の輝かしさを描き出している。いわば、世界の追体験に近い。それに対して、「すみっこの空さん」では、小学校に上がったばかりの少女・空さんと、彼女と話すことのできる亀のプラトンを中心に、“哲学”という切り口で日常を描き出している。哲学といっても、小難しいものではない。たとえば、道に落ちているものを拾ってきては怒られる空さんは、「なぜ道に落ちているものを拾ってポケットに入れたくなるんだろう?」と考えたりする。僕らはそう問いかけられたら「子どもは好奇心旺盛だから」なんて答えるだろう。だけど、空さんは思いもつかない答えを導き出す。それは、世界をゼロから解釈し直すことといっていい。「新鮮さ」とはひと味違う、世界の再発明。それが本作の提示する輝く世界なのだ。

【ここにも注目!】
コミックスの表紙は、1巻がタンポポの咲く春、2巻がひまわりをバックにした夏、3巻が落ち葉の舞う秋と、春夏秋冬になっている。4巻の冬はどんな風景になるか、今から楽しみ!

(このレビューは第3巻時点のものです)

記事:ネルヤ編集部

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