180cm、ブスだけどモテる異色家政婦の人気シリーズ——「誰そ彼の家政婦さん」(小池田マヤ)



「誰そ彼の家政婦さん」(小池田マヤ)
お料理マンガ度:★★★½☆
男前度:★★★★½
心に染みる度:★★★★½

「月と6ペンス」などで知られる作家のサマセット・モームは、「どんな髭剃りにも哲学はある」と書いている。どんなつまらないことでも、毎日続けることには必ず独自の思想や方法論が生まれるといった意味だ。髭剃りですらそうなのだから、家事全般を生業とする家政婦さんのプロには、当然さらに多岐にわたる哲学が生まれるだろう。「放浪の家政婦さん」から始まった、小池田マヤの家政婦さんシリーズは、ちょっと変わった家政婦のプロ中のプロ・里が仕事でさまざまな家へと派遣され、依頼人たちの心を解きほぐしていく物語だ。

家政婦といったら、メイドやベビーシッター、あるいは扉からそっと家庭の真実をのぞき見る探偵といったイメージが強いが、里はどちらかといえばぶっきらぼうなタイプ。180cmと大柄で、不器量なのに、やたらとモテる。要するに、従順なメイドさんというのとはまったく違うタイプの女性だ。料理をはじめとした家事が得意なまさにデキる家政婦なのだが、では、得意の料理で依頼人たちのトラブルを解決していく話かというと、意外とそうでもない。里が見せるのは、自らの哲学のようなものだ。揺るぎない彼女の生き方、スタイルが、いつの間にか依頼人の心に入り込み、打ち明け話をさせる。散らかった頭のなかや、気持ちを、部屋の掃除と同じようにして、いつの間にか整理整頓して去っていく彼女は、家事というよりも、生活すべてをひっくるめたものを扱い、哲学を培ったプロフェッショナルなのだ。

【ここにも注目!】
「誰そ彼の家政婦さん」は、「放浪の家政婦さん」、「ピリ辛の家政婦さん」に続くシリーズ3作目。本作では省略されているが、前2作では巻末などには作中で登場する料理のレシピなども掲載されている。ちょっとハードル高めの料理が多いが、レシピだけでも多少味がイメージできるので、見ていて楽しい。

記事:ネルヤ編集部

関連リンク
フィール・ヤング | 誰そ彼の家政婦さん

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