iBookstoreデビューで改めて考える電子書籍における表現リスク


編集長・小林が1週間のマンガの話題をゆるーく振り返る週刊コラム。今週は……やっぱりAppleの話題ですよねぇ。

■いい加減電子書籍に移行しないと床がヤバい

いきなり私事なのだけど、先日我が家の本棚が1基倒壊を起こして、えらいことになった。まぁ、あからさまに積載量オーバーという感じで、すでに棚全体がたわんでいたので、起こるべくして起こったという感じはあるんだけど、まさか地震とかも起こってない無風状態で倒壊するとは思っていなかった。突然死の恐怖。

本棚の倒壊自体は補強して直すという話なのだけど、むしろそろそろ本当に蔵書補完の限界が来ているというのが問題だったりする。原則として我が家は蔵書は減らない(処分しない)ので、日に日に紙が増えていくことになる。今はどうにかできても、3年後、5年後となると、現状の方針だと物理的な収納限界が来るのは明らかだ。

この話は、マンガ好きという人たちの間では常に問題になっている。要はマンガ読みにとってもっとも高いコストは、購入する費用ではなく、保管コストなのだ。

そうなると、当然出てくるのが電子書籍だ。僕の周囲だとまだ本格的に電子書籍にシフトしている人はほとんどいないし、今後どれくらい(どのような形で)電子書籍が一般に浸透していくかもというのもわからないのだけど、理論的には圧倒的に保管コストを削減できるのが電子書籍なのだ。

そういうある種の期待感がずっと根底にあるなか、今週AppleのiBookstoreの日本版が突然リリースされた。

■電子書籍の3つのハードルとApple

iBookstoreについては、ここを見ているような人はもう今週散々目にしてきたと思うので、概要についてあまり詳しくは語る気はない。要するにAppleの電子書籍ストアだ。

iPhoneやiPadという、現在の携帯市場で強烈な存在感とシェアを持つ端末を要するAppleの参入は、やはりインパクトが大きい。すでにかなりの数の端末が普及しているので、スタート時点から一定の市場規模がある。そういう意味ではAmazonのKindleよりも強烈だ。

電子書籍には、ざっくりと3つの参入障壁、不安がある。1つは端末。もちろんPCや従来のスマホでも見ることができるサービスは多いが、PCでは紙の単行本のように気軽に電車内などで見るのには向かないし、スマホではやっぱりちょっと画面が小さい。いずれにせよ、何らかの環境作りは必要なのだ。

2つめは決算登録。オンラインサービスは基本的に現金で購入ができないので、クレジットカードやプリペイドカードの購入など、何らかの決算登録が必要になる。登録すればいいだけではあるけど、新規で登録をするというのは心理的ハードルが高い上、クレジットカードを持たない僕や低年齢層は「お小遣いで買う」というのがなかなかできなかったりする。

3つめはサービス永続性への不安。現在、多くの電子書籍サービスは、DRM(デジタル著作権管理技術)が入っており、ユーザー側で簡単にコピーして保存するようなことはできない。それ自体がユーザー的にいえば「鬱陶しい」のだけど、とはいえコピーが楽すぎるのも問題があるというのは理解できる。なので、どういう落としどころを見つけるかが課題なのだが、それはともかく、DRMがかかっている電子書籍は、目の前の不安として、サービス自体が終了したときに、どうバックアップを取るかという問題を抱えている。サービスが継続している間は、HDDのクラッシュや端末のトラブルなどで手元のファイルが失われても、再ダウンロードなどが可能だったりするが、サービスが終了すると、失われたデータは取り戻しようがない。

「失われるリスクがある」というのは紙の本も同じではあるのだけど、端末買い換えやHDDのクラッシュなど、デジタルデータのリスクは想像以上に高い。

実際すでに昨年の段階で楽天の電子書籍サービス・Rabooがサービス終了を発表し、今年(2013年)3月いっぱいでシュリンクする。Rabooに関しては、同じ楽天のkoboへの移行支援を購入金額の一部付与という形で行っているほか、電子書籍店の老舗・eBookJapanが支援を申し出た経緯がある。ただ、いずれにせよ、サービスが終わるというリスクは、電子書籍市場が過渡期にある現在は、かなり大きな不安だ。

→NEXT Page:正直言うと、Appleに電子書籍のシェアを取って欲しくない気持ちも……

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