Amazon売り切れ、“難民”発生。でも重版なし――“余ってる”のに品薄になるマンガの流通ジレンマ


マンガや書籍は店頭にない場合、書店から注文することができる。これは昔からある方法なので利用したことがある人も多いだろうが、ご存知のとおりすべての作品が必ず手に入るわけではない。

22日、こうしたマンガの流通と在庫をめぐる問題がTwitterの書店員やマンガクラスタの間で話題になった。

■TLで話題に上がった「市中在庫」とは何か?

書店で注文しても入荷できないというとき、いくつかのパターンが考えられる。代表的なのは、いわゆる「絶版(=品切れ重版未定)」。出版社にもすでに在庫がなく、かといって重版する(新たに作品を作る)予定もないので手に入らないというケースだ。

だが、商品はあるのに手に入らないということもある。たとえば、「市中在庫」が多すぎる場合だ。

「市中在庫」というのは、書店にある在庫のこと。日本の場合、一般的に本が店頭に並ぶとき、出版社から委託販売されている形になり、売れなかった場合は(さまざまなルールはあるが)原則として出版社に返品できる。つまり、出版社から見れば、店頭に並んでいる作品でも、売れていなければ在庫と同じなのだ。

そのため、一部の書店で売り切れていても、大型書店などに大量に単行本が残っている(市中在庫が多い)場合、注文が入っても重版を行わず、書店からの返本を待って再配本というケースは実際多い。だが、その結果、読者が読みたいときに作品が届かないことは起きてしまう。

また、TLでは「出版社にはあるが、取次(本の流通業者)に在庫がないというパターン」も挙げられていた。出版社は印刷した本を、すべてひとつの取次に渡しているわけではない。複数ある取次サイドはそれぞれに預かる本の数を決めており、ある取次には在庫があって、別の取次には在庫がないということもありうる。また、出版社に在庫があっても、取次が持っていないこともある。

書店は取次だけでなく、出版社に直接注文をすることももちろんできる。だが、出版社によって追加注文のシステムもさまざまで煩雑であるため、書店によっては取次とのみやりとりをしている店舗もあるようだ。こういった店舗の場合、出版社に在庫があっても「入荷なし」となる場合があるだろう。

■Amazonでは売り切れ、でも実売は……

こうした流通のミスマッチ問題は、しばしば話題になることがあり、場合によっては流通システムや出版社、取次への批判に直結することも多い。「取次の配本がバカだから」「出版社がいつまでも重版しないから」といった論だ。

こうした批判はある面では間違ってはいない。出版社は読んで欲しいと思っており、読者は読みたいと思っているのに、商品が届かない。これは小売業にとってもっとも不幸な状態であり、本来であれば絶対に避けたいことだ。

出版社や取次は基本的に「見つからない!」という声に対して謝るしかない。だから、いっそう読者や作家からすれば怠慢に見えてしまう。だが、彼ら自身も届けられないジレンマに苦しんでいる。

たとえば、市中在庫の問題。出版社の人間に聞くと、こんなケースがよく起こっているという。

100冊の本があったとして、それを大型書店に50冊、中小規模書店に2冊ずつ合計25店舗に分配。結果、大型店では50冊中20冊、半数の小規模店で売り切れ、残り12店舗で各1冊売れた。

これは一見悪くない数字だ。売り切れている店舗も多いので、そのエリアの読者は「足りない」と感じるし、書店からの追加注文も入る可能性は高い。しかし、計算してみると、実売率は「20+26+12」でわずか58%。4割以上が“余っている”状態だ。

発売直後の動きならともかく、ある程度の期間をかけてこの数字なら、出版社としては重版できないのが実情だという。もちろん、リスクを冒して重版することで、店頭で火が付き、ヒットにつながる可能性もあるだろう。だが、ますます在庫が増え、重版することで赤字になっていく可能性の方が高い。かといって、市中在庫がすぐ返ってくるわけでもないので、エリアによっては品薄感が続くし、中小書店の売りたいのに売れないという不満も高まる。出版社にとって返本はイヤなものだが、市中在庫が偏っているときなどは「むしろ返本してほしい」と思っていることもあるようだ。

これはAmazonなどでも同じ。「Amazonで売り切れが続いている」という場合も、実は実売30%程度なんてこともあり得るという。毛細血管のように張り巡らされた書籍の流通は、一部だけ見てもそれが全体像と一致するとは限らないわけだ。

さらに、意外と論点として挙げられないが、返品、再配本のコストもバカにならないという。再流通させるコストだけでなく、「改装費」もある。何度も店頭に並び、流通を繰り返せば新品の本も傷んでくる。これをキレイにし、カバーを掛け替えたりするのが本の改装。ケースバイケースだが、こうした再配本を3回も行うと利益がなくなるという出版社もあるという。

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