今、男子校臭さを感じるなら高専マンガでしょ――「浪漫派寮生小島」(末吉誠)


女子校を舞台にしたマンガというと「お姉様、ごきげんよう」的な世界だったり、何かこうキャッキャウフフとした作品が多く、そのイメージで実際の女子校出身者と話をすると「おめでてえな」って顔をされるものですが、男子校を舞台にしたマンガも意外と同じようなギャップが多いんですよね。女の子が男を装って男子校に入学する「花ざかりの君たちへ」(中条比紗也)とか、フランスの全寮制男子校が舞台の名作「トーマの心臓」(萩尾望都)とか、パッと思いつくところだとかなり華やかな少女マンガが多かったりして。

まあ、女子校と違って男子校はむさ苦しいイメージが強い(と少なくとも我々男性陣は思っている)ので、あまりイメージの齟齬が出ることはないと思いますが。僕は共学出身なので詳しい実情を知っているわけではありませんが、一応いっておくと、思春期バリバリの10代男子を女性と隔離して生活させるとですね、うーん、たいていは爆発しますね。夢とか希望的なものが。具体的にいうとリビドーですけど。

実際男子校出身の友人に「高校時代ってどうだった?」って聞くと、「楽しかったよ」って答えるんですよね、なぜか目線をそらしながら(※男子高生の名誉のために書いておきますが、みんないい奴で、大変遺憾ながら僕よりずっとモテます)。

しょっぱなから話が逸れてしまったんですが、マンガの世界では伝統的に女子校同様、男子校もドリームの舞台になりやすく、意外と「THE 男子校」なノリって共学を舞台にしてたりするわけです。そんななか、ここのところ急に目に付くようになったのが「高専」こと高等専門学校を舞台にしたマンガ。ご存知の方も多いと思いますが、高専というのは中学卒業後に進学できる5年制の学校で、通常の高校よりもより専門的な技術や知識を学習できるという教育機関です。

今年1月に高専を舞台にした「ラジオヘッズ」(向浦宏和)の1巻が出たと思ったら、続いて4月には今回取り上げる「浪漫派寮生小島」(末吉誠)が発売。過去に高専を扱うマンガがなかったわけではないですが、立て続けに出てくるのはやはりちょっと珍しいです。

しかも、両作とも男子校ばりに男臭い。もちろん高専は共学も多いのですが、工学など理系を専門とするところが中心のためか、伝統的にほぼ男子校みたいなカテゴリーに入れられることが多いんですね。その辺もあってか、ヘタな男子校マンガより男子校らしさ(というか、思春期の男のバカっぽさ)がよーく描かれています。

「ラジオヘッズ」はロボットを作ったりと技術系らしいネタを軸にしつつ、基本男子全員変態という作風ですが、「浪漫派寮生小島」はそういう技術系っぽさも大胆にカット。思春期下ネタ全開のバカ系男子青春モノになっています。第1話が始まって最初の見開きで、いきなりベランダで下半身丸出しですから。エロと女の子のことばっかり考えてますからね。もちろん下着はブリーフです。

そういう男子校的なノリがバカバカしくて楽しい作品なのですが、こういうのってタイトルにもあるとおり、一種のロマンがあるんですよね、男にとっては。男のロマンっていうと、海賊王とか、プール付きのマンションと純白のメルセデスと最高の女とかっていうのをイメージしがちですが、一方で女子寮に忍び込もうとしたり、パンチラで大喜びしたりっていうくだらない思春期のテンションも、やっぱりロマンだったりします。10代の頃のパンチラって、20代、30代の頃に見る現実味を帯びた全裸よりも重いんですよ。夢が詰まってるから。

「浪漫派寮生小島」は、「バカバカしい!」と笑わせつつ、男をどこか懐かしい気持ちにさせるノスタルジックなロマンを感じさせてくれます。

記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。Twitterアカウントは@frog88

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