マンガのビニールパック事情がちょっと変わり始めたかも


編集長・小林がマンガについての話題をゆるゆる語る週刊コラム。今週は重箱の隅をつつくような話を。

■版元シュリンクが始まったの、気付いてました?

この間年が明けたと思っていたら、2月ももう終わりだそうで、ちょっと何を言っているかわからないというか、新手のスタンド攻撃でも受けている気分なのだけど、「どうも3月は本気で明日からやってくるつもりらしい」という情報を入手して、正直今発狂寸前だ。本気で明日から3月を始めるつもりらしい。よろしい、ならば戦争だ……!(各種〆切と)

とか言っていても、実際書店に行くとビッグコミック系の新刊(通常30日発売)が並んでいたりするので、もはや現実を受け入れるしかない。2月は死んだ、もういない。

そんなわけで、目下月末の新刊をチェックしている状態なのだが、最近の講談社・モーニング系の新刊で面白い試みが始まっている。一部タイトルで、版元によるシュリンクが行われているのだ。バーコードがビニールパックの外側にシールで貼られているので、気付いている人も多いだろう。僕が確認したかぎりでは、去年の11月新刊には始まっていた。今手元にある2月新刊でいうと、「つらつらわらじ」(オノ・ナツメ)5巻と「Eから弾きな。」(佐々木拓丸)1巻が版元によるシュリンク済みだった。

■シュリンクコストは案外バカにならない

ここでいうシュリンクというのは、いわゆるビニール包装のことだ。現在、ほとんどの書店でマンガの単行本はビニールパックされている。

で、「それがどうした?」と思うかもしれないが、これ、けっこう大きい話なのだ。書店員さんや出版社のかたはよくご存知のように、このビニールパックは、基本的には書店が行っているものだ。なので、大量に新刊が発売される日などは、TLでシュリンク作業で死にそうになっている書店員の皆さんから、死臭が漂っている。何しろ大きいお店だと1タイトルで1000冊とか入る場合もあるということだから、もう考えただけで死屍累々という感じだ。お疲れ様です。

ちなみに、ファッション誌などで多い、大型付録の梱包も書店サイドが行っており、コミックスのシュリンクとあわせて、書店の潜在コストになっているという問題は、去年、日本書店商業組合連合会の書店再生委員会が改善を求めて提案書に盛り込んでいたりもする。一概にどうすべきとはいえない問題だが、書店にとって重いコストになっているのは事実だ。

そんななかで、一部とはいえ、出版社側でシュリンク済みの単行本が出始めたというのは、それなりにインパクトを感じる話題だったりする。

■シュリンクでどんなことが変わるか?

シュリンク済み単行本は、これまでもあるにはあった。付録同梱の限定版などだ。で、実は今シュリンクがかかっている単行本も、(これまで僕が確認したかぎりでは)特典のイラストカードなどが封入されていたので、推測ではあるけれど、「封入物があるから版元で手リンクして出荷している」という理屈なんだと思う(ちなみに、このポストカードなどの特典物を版元側が封入しておくというのも、書店側の作業コスト軽減になっているはずだ)。

いずれにせよ、出版不況といわれ、流通も版元も決して明るい状況とはいえないなかで、積極的にコスト負担を行っているわけだから、立派だなと思って見ていた。表4(いわゆる裏表紙)にバーコードが印刷されない(バーコードはビニールに付いている)ので、本としてのデザイン性も上がるだろう。

そんなわけで、シンプルに明るい話題だと思って受け止めていたのだけど、気付かないところで過渡期ならではの混乱みたいなものもあるようだった。たとえば書店。これ、当然書店さんも喜んでいるだろうなと思っていたのだけれど、先日ちょっと聞いたら、実は店舗によってはコスト減になっていない場合もあるらしい。万引き防止用のICタグなどを入れている店舗の場合だ。

シュリンクの中にICタグを入れて万引き防止を行っている場合、シュリンクしてあっても改めてICタグをどこかに入れなくてはならない。なので、結局シュリンクし直したり、何らかの対策を打つ必要があったりするらしいのだ。

それから、バーコード。これもあまり考えていなかったのだが、ブクログなどの蔵書管理サービスでは、バーコードを読み込んで本を登録できるアプリがある。なので、読み終わってからバーコードを読み取る人は、本自体にバーコードがないことで、若干手間が増えるだろう。ビジネス的にバーコード管理を行っているところへの影響は案外大きいかもしれない。

誤解を招くと困るのだが、こういう重箱の隅をつつくような話をしているのは、別に版元シュリンクに反対したいからではまったくない。むしろやっぱり全体としては恩恵の方が大きいと思うし、明るい話だ。

ただ、こういうほんのわずかな変更でも、思ってもいないところで影響が出るのが、巨大な流通システムなのだ。大きなシステムのなかで何かを変えるというのは、いろんなところで見えないコストを孕むものなんだな、と思わずため息をついてしまった。

そんなわけで、講談社さんの版元シュリンク、各方面で何かと大変なこともあるかもしれないけれど、頑張っていただきたいなーと、無責任に外野から思いながら、店頭を眺める1週間だった。

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記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。最近、読むナビさんでオススメ紹介を始めました。Twitterアカウントは@frog88

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