「11人いる!」「トーマの心臓」などで知られる日本を代表する少女マンガ家・萩尾望都が、「Japan Expo」 (7月5日~7月8日)に登場した。
Japan Expoは毎年この時期にフランス・パリで行われている欧州最大の日本文化イベントで、アニメやマンガ、ゲームなどのブースが立ち並ぶ、フランスにおけるオタクの祭典だ。13回目となった今年は4日間で20万人以上の来場者が訪れている。
講演やライブなども行われるJapan Expoだが、萩尾望都は同人ゾーンに自らブースを構え、原画やJapan Expo限定の同人誌などの販売を行った。コスプレも多い祭典ということで、萩尾もこの日は浴衣にネコミミという出で立ちで会場を盛り上げていた。
日本では今年4月に紫綬褒章を受章し、「少女マンガの神様」とも呼ばれる萩尾望都だが、フランスでの知名度は皆無に近い。
というのも、フランスでの人気作品はもっぱら少年マンガ。「少女マンガ」というジャンル自体の認知度がまだまだ低く、萩尾望都の作品もまだ公式に翻訳されたものはないという状況なのだ。
だが、そんなフランスでも少女マンガに注目する動きが見え始めた。
たとえば、萩尾望都は今年に入り、パリのブックフェア「Salon du Livre」やフランス国立美術館で行われたマンガイベント「Planète Manga!」に招待され講演を行い、日本における多様な女性向けマンガや女性作家の多さについてフランスの聴衆へ伝えている。
Japan Expoでも、もともと萩尾望都のファンだったという人は少ないが、その線や構図の美しさに魅せられて、ブースで足を止める来場者が多かったようだ。萩尾望都ブースの運営などを担当したスタッフは、「萩尾望都のことは知らなくとも、先生の作品の魅力は伝わっているようで、同人誌は美術やマンガを学ぶ学生らによく売れている」と話す。
年内には代表作である「トーマの心臓」が萩尾望都作品としては初めてフランスで出版されることが発表された。 近年売上はほぼ横ばいで、成熟しつつあるフランスのマンガ出版であるが、萩尾望都をきっかけに新たなムーブメントが起きるかもしれない。
記事:坂井拓也 SAKAI, Takuya
大学院にて日仏マンガ文化の研究を行う傍ら、フランスにおける日本のポップカルチャーに関連した記事を執筆している。TwitterはahYouthfuldays。ブログはhttp://japanfr.blogspot.com
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