今年は、そういう作家という職業モデルの地殻変動が形となって出てきた年だったと思う。「ドラゴン桜」(三田紀房)や「宇宙兄弟」(小山宙哉)といったヒット作を担当してきた編集者・佐渡島庸平さんが、講談社を退社して作家のエージェント会社・コルクを立ち上げたのも今年。安野モヨコ先生や小山宙哉先生など、どえらい作家さんたちが契約作家となっている。
まぁ、僕自身はまったく面識もないし、インタビューをしたわけでもないので、実際にコルクがどういうことをしていくのかというのを把握しているわけではないけれど、インタビューなどで語られるビジョンを見ると、メディアミックスなどを含めて「作品の価値を最大化するための動き」を担っていくのが狙いのようだ。
出版社という枠のなかでは出版物を売るという目的に縛られることが往々にしてある。というか、出版社は出版物を売る会社だから当然なんだけど。作家のエージェント、マネージメントというのは、要するにコンテンツそれ自体を、出版物に限らない形で世の中に出していくための動きなんだと思う。これも作家という職業のありよう、働き方、ビジネスモデルをたぶんジワジワと変えていくはずだ。
この辺の動きが実際にどういう形でどれくらい結実するかはわからないけれど、少なくともそういう動きがマンガという産業には出てきたんだなというのはいよいよハッキリ感じられるようになってきた。それはたぶん、もうずーっといわれ続けている出版不況というやつが、実際に押し寄せているのか、もしくは放置できない将来に対する不安となってプレッシャーをかけてきている結果なのかな、みたいな景気の悪いことをわざわざ年末になって考えてしまっていた。
だけど、相変わらずマンガは面白いし、面白いものはしぶとい。新しい形がマンガをもっとしぶとくしてくれればいいなと、そんなことを思う1週間だった。
記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。年末は「どうぶつの森」で過ごします。Twitterアカウントは@frog88。
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