【 #俺マン2012 総評】男性マンガ・女性マンガの垣根が消えたマンガ界で、独立勢力となる2つのジャンル


#俺マン2012の集計結果からトレンドなどを、ネルヤ編集長・小林が分析する本コラム。作家に注目した前回に続いて、今回はジャンルやレーベル別にチェックしていきます。

■大手を猛追する芳文社の存在感

#俺マン2012の集計結果は、とりあえず上位200位圏内のタイトルまでを公開しているが、すでに発表しているとおり、単純に1票以上入ったタイトルを数え上げると1200作品を超えている。上位は公表しているとおりだが、1票作品を含めた全タイトルを出版社別に集計した場合、どうなるか? 以下は、全1208タイトルを版元別に分けた結果だ。

1位:講談社(226作品)
2位:集英社(158作品)
3位:小学館(152作品)
4位:白泉社(68作品)
5位:秋田書店(55作品)
6位:芳文社/スクウェア・エニックス(各51作品)
8位:エンターブレイン(38作品)
9位:マッグガーデン(34作品)
10位:少年画報社(32作品)

ここでは得票数を考慮せず、名前が上がった作品がいくつかという形で集計している。講談社、集英社、小学館のいわゆる大手3社は別格の多さ。これは総刊行点数の多さも当然関係しているだろう。そのあとに200位圏内に6タイトルを送り込んだ白泉社、同じく4タイトルを送り込んだ秋田書店が続く。

そして、4位、5位に迫る勢いで作品を送り込んでいるのが、芳文社とスクウェア・エニックスとなる。ここで特に注目したいのが芳文社だ。

スクウェア・エニックスは8作品が200位圏内にランクインしており、上位でもかなりの存在感を見せているが、芳文社に関しては200位圏内には「きみの家族」(サメマチオ)と「アキタランド・ゴシック」(器械)の2作品のみで、それほど大きなインパクトは感じさせない。だが、1〜2票の作品を中心に、実はかなりの人数が芳文社作品をプッシュしており、集計の過程では相当な存在感を持つ版元になっている。

この芳文社の存在感というのは、2012年のマンガ読みの空気感がそのまま出ているといってもいいと思う。

■ランキング下位で存在感を増す4コマと百合

もちろん芳文社はいろんな作品を刊行している出版社なので、社名だけですべてをくくれるわけではない。が、#俺マン2012の結果からいえば、大きく分けて芳文社は3つのゾーンを持っている。

ひとつは青年誌に当たる週刊漫画TIMES。漫画TIMESは漫画ゴラクや漫画サンデーと並んでいわゆるオヤジ雑誌の代表格というイメージが強く、誌名を聞くと「解体屋ゲン」(画:石井さだよし/作:星野茂樹)のような作品が頭に浮かびやすい。が、ドラマも始まった「信長のシェフ」(原作:西村ミツル/画:梶川卓郎)や「図書館の主」(篠原ウミハル)あたりを輩出しているのも漫画TIMESだ。

もうひとつはいまや芳文社の顔ともいえる、「まんがタイム」「まんがホーム」「まんがタイムきらら」をはじめとする4コマ雑誌群で、これが非常に大きなボリュームを持っている。雑誌自体も多く、作品の掲載誌を調べる上で、何度かめげそうになった(というか、実際めげた)のが芳文社をはじめとする4コマ誌だ。

だって、「まんがタイム」「まんがタイムきらら」あたりまではともかく、「まんがタイムきららキャラット」「まんがタイムきららMAX」「まんがタイムきららフォワード」「まんがタイムきららミラク」とかきらら系だけでも山のようにあり、しかも各作品が複数の雑誌で横断連載されていたりするので、もはや掲載誌がどれなのかというのは素人には判別できない。ここにさらに竹書房の「まんがくらぶ」「まんがライフ」系が加わると、大混乱となる。誌名がわからなくなる(実際何度か間違えた)。

とまぁ、このあたりは自分の4コマ誌への知識不足がとにかく大きいことが問題なのだが、それはともかく、4コマ誌の作品というのは上位にこそあまりいないが、実は相当なファンの熱量があるジャンルになっている。

そして、もう1つはいわゆる百合雑誌である「つぼみ」。このジャンルも上位にはあまり入っていないが、一迅社の「百合姫」などを含め、確実に一定数のファンを獲得しており、全体としては存在感のあるクラスタとなっている。

→NEXT Page:4コマと百合、ジャンル別で俺マンを見ると……?

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