その昔、主にレコードの世界で「ジャケ買い」という文化があった。当時は試聴もできないから、シャレたジャケットを見せて販売につなげようとする、売り手サイドの作戦だ。
これが今や、出版の世界でも当たり前になっている。たとえば、太宰の「人間失格」。まずは「DEATH NOTE」の作者・小畑健氏のイラストを表紙に使ったらさっさと文庫ランキング入りし、その後映画化に伴ってジャニーズの生田斗真を起用したらまたバカ売れ……みたいなことが繰り返された結果、内容とは直接関係のない表紙が成立するようになったのである。
もちろん、編集者は常に「いい表紙」を作ろうとする。ここでいう「いい表紙」の定義は実に曖昧なのだが、あの手この手を繰り出しての努力をするわけだ。それはマンガの単行本でも同様で……って、こんなに文字数を割いてまで何をいいたいのかというと、私、この「東京喰種」(石田スイ)、ジャケ買いしました(笑)。特に第2巻のトーカちゃんがカワイイのなんのって(というわけだから、この場合は“内容とは直接関係のない表紙”ではない)。
ストーリーは、ごくシンプル。人間を捕食する喰種(グール)という連中がたびたび出没する世界で、大学1年生の主人公・金木研が期せずして関わることになる。と同時に、思いもよらない悲劇が金木に襲いかかり、さあどうしましょう? という物語。こういう話は、“人類対その天敵”という構図になるのが普通だが、本作ではその構図に少し仕掛けをしてある。そのあたりは読んでのお楽しみだが、まあ、金木くんはカワイソーなのである。
設定でわかるとおりSFサスペンスなんだけど、SFってのはまずその世界に読者をスルっと引き込まなくちゃならないから、冒頭で長々と設定説明をするケースが多くてウザいもの(西暦○○○○年、××帝国は▽▽軍の激しい攻撃を受け……みたいなやつね)。しかし本作では、そんな面倒を一切省いた導入をしているのが好感度大だった。
物語が進むと、喰種にもいろんなタイプがいたり、喰種対策局なんつー組織の捜査官が出てきたりして、このへんから面白さがターボつきで加速する。SFとはいえ、金木の私小説っぽい部分もアリ(そりゃ苦しんでトーゼンだ)。今後の展開が楽しみでたまらないのだけれど、個人的にはもっともっと壮大な話にしてもらって、いつかハリウッド映画化! みたいな余禄がつくとさらに楽しいかな。
(このレビューは第3巻までのものです)
記事:浮田キメラ
幼少時よりのマンガ狂で、
「上手にホラを吹いてくれる作品」が好み。
関連リンク
東京喰種-トーキョーグール- – 週刊ヤングジャンプ公式サイト
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