マジメで優等生。だけど、要領が悪いのか、意外と成績が良くなかったり、報われないタイプというのがいる。読み切り集「藤代さん系。」(湯木のじん)の表題作で主人公を務める藤代さんはそんなタイプだ。
藤代さんはとにかくかわいい。何をやらせても要領のいい、藤代さんとは真逆のタイプのクラスメイト・久世くんにいじられる姿なんか、不憫に思いつつもふっと微笑んでしまうキュートさがある。確かに要領は悪いけれど、藤代さんのマジメさや誠実さは間違いなく彼女の魅力だ。彼女自身だってそんな自分を嫌っているわけではない。
だけど、本作が絶妙なのは、“藤代さん系”であることが、彼女のなかの小さな失望でもある点だ。報われたくてマジメに生きているわけではないけれど、報われないし、冴えない自分に、藤代さんは少しだけ失望している。
自分の信念に従うことは、必ずしも成果を伴わない。むしろ、自分のふがいなさに失望することだらけだ。正しいと信じて行動しては、失敗し、そのたびに僕らは傷つく。
自分に失望するのは辛いことだ。それはときとして誰かに失望されるより、ずっと心を苛む。
だけど、自分を軽蔑して生きるのはもっと辛い。
だから、藤代さんは“藤代さん系”であることをやめない。自分の要領の悪さに嫌気がさしても、一生懸命マジメであろうとする。そういう自分を捨てることは、自分に失望するよりもっと悲しいことなのだ。
「藤代さん系。」が“藤代さん系”でない僕の胸を打つのは、たぶんそういう自分のなかの小さな失望をちょっとだけ救ってくれるからなんだと思う。
(本作は1巻完結です)
記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。最近Twitterで「妖怪レンゲ舐め」と呼ばれるようになってしまいました。インターネット怖いです。Twitterアカウントは@frog88。
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藤代さん系。| マーガレットコミックス|BOOKNAVI|集英社
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