昨年の暮れに、マンガ好きの人と2013年の各マンガ誌の話になったとき、「来年は週刊少年マガジンが勢いづくと思う」と言われたことがあった。いろいろ根拠なども聞きつつ、そのときは「ふーん、そうなのか」くらいに思っていたのだけれど、蓋を開けてみたら、本当に今年のマガジンは勢いを感じさせる雑誌になっている。読み切りの「聲の形」(大今良時)が大きな反響を呼び、即連載化が決定したりと、とにかくパワフルな動きが目立っている。
そして、もちろん連載陣も良作が揃ってきている。特に度肝を抜かれたのが、この「七つの大罪」(鈴木央)だ。
本作は、騎士たちが活躍する西洋ファンタジーふうの舞台に、少年っぽい主人公とお姫様が冒険の旅に出るという、冒険ファンタジーの王道中の王道というべき作品だ。“七つの大罪”と呼ばれる伝説の大罪人といったキャラクター設定を含め、悪くいえば何のヒネりもない物語になっている。
だが、読み始めると改めて当たり前のことを思わされるのだ。「物語」というのは「あらすじ」とは全く別のものだ、と。
何のヒネりもない「七つの大罪」は、飛び抜けた目新しさはないが、あらゆる要素がずば抜けて高レベルだ。ヒーローは親しみやすく、かつ最高にかっこいいし、ヒロインは飛び抜けてキュート。世界観はベタなぶん、心地よい懐かしさを感じさせる。そして、圧倒的な描き込みと画力がそのキャラクターと世界観を裏打ちする。見ているだけで楽しくなるし、キメのシーンは極めて爽快だ。これほど水準の高い冒険ファンタジーは滅多にお目にかかれるものではない。
絵柄的にも感じることだが、かっこよさとユーモア、爽快感をあわせ持つその世界観が思い起こさせるのは、鳥山明だ。「DRAGON BALL」(特に初期の)や、あるいは「ドラゴンクエスト」シリーズのような、冒険に出て行くワクワク感と牧歌性を両立する魅力が、「七つの大罪」にはある。そして、あえて断言するなら、きっとその感覚こそ“少年マンガ”のど真ん中にある魂なのだ。
たくさんある連載作のなかの1作品ではあるけれど、少年マガジンには“少年マンガのど真ん中”が生まれた。そういう少年誌が勢いづかないはずがないと思うのだ。
記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。2012年の年間マンガ購入数が1000冊を超えてました。読むナビさんでオススメ紹介を始めてます。Twitterアカウントは@frog88。
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