「初めて床屋に行く」、たったそれだけの話を鮮やかな作品にする恐るべき才能——「路地裏第一区 —ムライ作品集—」(ムライ)



「路地裏第一区 —ムライ作品集—」(ムライ)

独創感:★★★★★
叙情感:★★★★☆
異形度:★★★★½

もはやどんな文章を付けても蛇足にしかならないんじゃないかと思う。わざわざ「独創的な世界!!」なんていわなくても、カバーを見ただけで、その想像力の凄まじさが伝わってしまうはずだからだ。

個性的な絵だけれど、物語としては凡庸という作品はままあるが、本作はもうカバーの魅力そのままに、唯一無二の世界観と独特の叙情感を物語に閉じ込めている。たとえば、「初次去髪廊」という短編。これは「父親と初めて床屋に行く」、たったそれだけの話だ。しかし、面白い。子どもの頃、知らない場所にいったときの不安感が生々しく蘇る。この凄まじい新人の世界、ぜひ一度触れてほしい。

【ここにも注目!】
さまざまな動物や植物が登場する本作品集だが、とりわけ多いのが鳥のモチーフ。ギョロッとした目がちょっと怖いんだけど、同時にかわいいんだよなぁ、この鳥たち!

(本作は1巻完結です)

記事:ネルヤ編集部

関連リンク
地裏第一区 ―ムライ作品集― | IKKI COMIX | IKKI COMIX系 – 小学館
IKKI公式サイト[イキパラ]

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