少女のイノセンスが見せる、まばゆさとかすかな痛み――「忘れ雪の降る頃 高尾滋作品集」(高尾滋)



「忘れ雪の降る頃 高尾滋作品集」(高尾滋)
ときめき感:★★½☆☆
切なさ:★★★★½
純潔感:★★★★★

白泉社の作品には、独特のイノセンスみたいなものを感じることがある。少年少女の痛々しさや切なさとでもいえばいいだろうか。高尾滋は、そういう“白泉社っぽいイノセンス”を感じさせる作家だ。

卒業を前に突然の別れを切り出された少女を描く表題作、女の先輩への想いを秘めた少女の物語「デイジー・トリック」など、本作に収録された作品は、“明るく楽しい”とはちょっと違う、不安で切ない恋や想いを描いている。叶わなかった想いは、恋でいえばバッドエンドだ。だけど、彼女たちの「叶おうが叶うまいが、想っていたのだ」という純真さは、大人になると妙にまばゆい。無防備に誰かに心をよせることの不安と輝かしさを思い出させてくれる本作は、タイトルどおり「忘れ雪」のように、大人にかつての純潔さを思い出させてくれる作品集だ。

【ここにも注目!】
主人公が少女なのに対し、男性は一貫して年上のちょっと大人を感じさせるキャラクター揃い。友だち感覚の年上男性もいいけれど、この年上への憧憬のような、転がされる感覚もやっぱり定番としての魅力が。年上好きは必見!

記事:ネルヤ編集部

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