気になる書店をぶらりと巡る「書店ぶらり旅」。小規模ながら“濃い”あゆみBOOKS早稲田店を訪ねる第1回の後編は、いよいよマンガコーナーをレポートします。
今回のぶらりメンバー
さて、新刊コーナーに続いて、いよいよ店内突き当たりのマンガコーナーをチェック。
「あの一角はギュッと空気が濃くなってる気がする」(ランジェ)、「異空間に飛ばされる感じだよね(笑)」(catu)という、およそ書店を形容するときに使うことのない単語が飛び交う中踏み入れたそのコーナーがこちら。
平台を覆い尽くすように乱立するPOPの山。コミック担当の太田さんは「伝統的に情報量が多い店なんですよね」とかさらっと言っていましたが、多いどころじゃない。一種異様な光景です。棚全体から「読んでくれー!!」と訴えてられているような気持ちになります。
しかも、POPの総量が多いだけじゃありません。ものによっては1作品に3つも4つもPOPがついているものも。
今回のぶらりメンバーは全員過去に何度かこのお店に来たことがあるので、どういうところか知ってはいたのですが、やっぱり改めて見ると圧巻。気圧されるような棚です。
と我々がそんなことを思っていたら、太田さんがボソッと「いやー、なかなか時間がなくてできてないんですけど、本当は並んでる作品全部にPOP付けたいんですけどね」と一言。うん、太田さん、その棚はもう売り場というよりレビュー集ですよ。
でも、並んでいる作品には全部理由があるそうですからね。実際聞いていったら全部オススメコメントしてもらえそうです。
POPの量だけでなく、ラインナップもさすがのこだわりぶり。たとえば、平台には「マンホール」(筒井哲也)の姿が。
これ、個人的にも好きな作品なのですが、完結巻が出たのは06年。正直、マンガの場合、メディアミックスなどのタイミングでもない限り、6年も前の作品が平台に並び続けるのは非常に珍しいです。しかも、棚に並んでいる数を見てもらえばわかるとおり、実際売れている。あゆみBOOKSは最近荻窪にも新店がオープンしたのですが、開店直後に尋ねたところ、荻窪店でも平積みされていました。太田さんは冗談っぽく「あゆみBOOKSのために重版してるんじゃないかって感じですね」といっていましたが、実際あゆみBOOKS独自のロングセラーなんじゃないかと思います。
この辺りは「プッシュしていてかつ売れる作品を『売れる』に含めるとしたら、売れるから積んでいる作品が3割、プッシュしたいから積んでいる作品が7割という感じ」と、やはり相当太田さんの好みや思い入れが強い配置のようです。その熱意が棚を見るだけで実際に伝わってくるから、この異常に“濃い”という印象になるんでしょうね。catuさんは取材後「あの棚、箸休めがないですよ!」と語っていましたが、実際POPの有無にかかわらず「全部オススメ!!」という雰囲気です。
平台の情報量もすごいですが、棚も限られたスペースを最大限活かすための工夫が。なんとこのお店の棚刺し(背表紙を見せる状態で棚に並んでいるもの)、前後2段組になっています。
普通に前後2段にすると当然後ろに入っているものが見えなくなってしまうので、後列の作品は底上げして少しだけ高くしてあります。確かにこれなら後ろに何が置いてあるか、何となくわかりますね。
ただ、それでももともとのスペースが少ないので、どうしても巻数が多い作品をすべて入れることが難しく、一部だけになるものも。こういう作品は1巻から数冊でなく、新しい巻を何冊か置くようにしているようです。1巻から途中まで置くのと、途中から最新刊まで置くの、どちらが本当にいいかは太田さんもぶらりメンバーも結論は出せませんでした。うーん、本当にどっちがいいのか……ほかの書店さんにも聞いてみたいですね。
コミック文庫もなかなかの量。この辺りは普通の単行本と少し違った動き方をするそうで、たとえば最近だとパチンコでタイアップ台が出た「RAVE」(真島ヒロ)のまとめ買いがあったりしたそうです。
そのほか、いくつかの書店さんが共同で制作しているフリーペーパー「まんきき」も配布中。谷川史子先生など作家さんのインタビューを掲載するなど、非常に豪華な内容だったりします。
たっぷりお店を拝見し尽くしたところで、最後はお買い物タイム。各々、取材を忘れてプライベートなショッピングを楽しむことに。
で、さっそく新刊コーナーをチェックした結果……
小林はこういう状態に。
「その量はおかしい」という感じでぶらりメンバーにまで笑われたわけですが、僕は知っています。ランジェさんだって昨日新刊を買ってあるからこうならないだけで、買った量は大して違わないはずだ……! とはいえ、さすがに量が多くて身動きが取れないので、このあと一時レジで預かってもらいました。
そして、お会計。最近都内ではポイントカードやスタンプカードがある書店さんも多くなっていますが、あゆみBOOKSさんも一部店舗でスタンプカードを導入しています。なのですが、このお店のスタンプカードがまたすごい。
書店の場合、「購入金額の1%をポイントとして還元」とか「500円で1スタンプ」といったシステムが多いのですが、あゆみBOOKSのスタンプカードはなんと「3000円ごとに1スタンプ」。10スタンプで500円割引になりますが、普通のお客さんだとたぶんスタンプが貯まりきることなく財布のこやしになると思います。こんな強気のスタンプカード、見たことありません(笑)。ちょっとしたレアカードですので、お近くにスタンプカード導入店がある方はぜひまとめ買いでもして手に入れてみてください。
ちなみに。
僕はこの日、一気に5スタンプ付きました。資金も尽きました。
なお、このほかあゆみBOOKS早稲田店さんでは5000円お買い上げで、店舗2階にある喫茶店シャノアールで使えるドリンク無料券が貰えます。ぶらりメンバーもさっそく取材後、シャノアールで一休みしました。
取材後改めてぶらりメンバーで話をしたが、やはり出てくるのは「すごかったなー」という言葉。
catuさんが「目的がないときに行きたい店だよね」と言っていましたが、確かに店舗面積的にどうしても置けるマンガの数は限られるので、「ここに行けば欲しいマンガがなんでも揃う」というお店ではありません。が、担当者が「全部オススメです!」と断言できる強烈なセレクトショップのような棚作りは、魔力としか言いようのないものがあります。本当、行くと知らなかった面白い作品に出会えるんですよね。「こんなお店、近所に欲しいよねぇ」と話しながら帰路につきました。
というわけで、2回に渡ってお送りしたあゆみBOOKS早稲田店ぶらりレポ、記事では割とササッとご紹介していますが、実は約3時間も店舗に居座って話し込んでおり、最終的に太田さんからも「もう蹂躙され尽くした気分です」というコメントをいただきました。ぶらり冥利に尽きますが、営業のお邪魔になるので、次回からはもう少しコンパクトにまとめたいと思っております。
あゆみBOOKS早稲田店
住所 東京都新宿区馬場下町62-4 芝田ビル1F
電話番号 03-3203-7123
営業時間 8:00~25:00
URL http://www.ayumibooks.jp/
MAP あゆみBOOKS早稲田店
※掲載した店舗情報はすべて2012年3月24日時点のものです。
記事:小林聖
ネルヤ編集長。フリーライター。Twitterアカウントは@frog88。
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