動物はマンガでも定番ジャンル。特にマンガ家の場合、「グーグーだって猫である」のような作品がある大島弓子をはじめ、愛猫家として知られる人が多く、ペットマンガ界では猫がテーマになることが多いイメージだ。
もちろん今年も猫マンガはたくさんリリースされているが、今年それ以上に目立っているのは犬マンガ。飼い犬エッセイから異色作まで、かわいい系の犬マンガが続々登場している。今回は、そんな犬が主役の注目作を特集!
「いとしのムーコ」(みずしな孝之)
既刊2巻
かわいさ:
リアルさ:
おバカ感:
今年の犬マンガプチブームの牽引役といえばやはりこの作品。実在するガラス工房の職人・コマツさんと、その飼い犬・ムーコをモデルに2人の日常を描き、そのキュートさに多くの人がメロメロにされている。「少女ファイト」などで知られる日本橋ヨヲコも同作の大ファンで、Twitterでは本作が掲載されたイブニングを「ムーコニング」と呼んだりする場面もあった。
ムーコは人間には伝わらないものの、セリフは喋るという形を取っている“フィクション”ではあるが、人間の言葉を(多少)理解しつつも、妙にテンションが高くて、どこか抜けてるムーコの思考は、“賢いけどおバカ”という犬の特徴をうまく捉えている。普段は猫派という人は、まずこの作品で犬の魅力に触れてみては?
→作品レビュー:噛み合わない2人の確かな絆――「いとしのムーコ」(みずしな孝之)
「いくえみさんちの白い犬」(いくえみ綾)
全1巻
かわいさ:
リアル感:
猫派の視点:
「かわいいにもほどがある」「そろえてちょうだい?」など、多数の猫エッセイを描いているいくえみ綾だが、実は家には愛犬も。そんないくえみ家の犬、シロを主役にしたエッセイコミックが本作だ。もちろん実在のシロは喋らない(はず)だが、作中では作者の想像するところのシロの気持ちがセリフとして描かれ、お互いに会話が成立する形を取っている。そして、このシロもやはり、ちょっとおバカ系。やや高齢ということでテンションこそ高いほうではないが、いつもニコニコしてるような平和な感じは、猫とは違うほのぼの感を味わわせてくれる。
また、愛猫家でもあるいくえみが描いているということで、猫派から見た犬の特徴が見えてくるのも面白いところ。「犬っていうのは臭いね」なんて話は犬派には当たり前といえば当たり前なのだが、逆に「猫は臭くないのか!」という犬派はあまり知らない常識を教えてくれたりする。フローリングの室内に入れると、カチャカチャと爪の音がしたり(しかも滑って転びそうになる)、鳴かなくても息づかいが聞こえたりと、何かと存在感がある部分も、猫に比べると新鮮なんだと気付かせてくれる。猫派が犬の生態に触れるのにもピッタリだ。
「ほごけん」(柴田亜美)
かわいさ:
リアル感:
社会派感:
意外にもこれが初のエッセイコミックという柴田亜美の犬マンガ。3匹の犬を飼っている愛犬家だが、飼い犬以外に「保護犬」を預かるボランティアも行っており、本エッセイではそんな保護犬との暮らしを描いている。保護犬というのは、保健所に収容された後、ボランティア団体などにより保護された犬のこと。その里親が決まるまで、一時的に柴田のようなボランティアが預かって飼っているのだ。
保健所や保護といったテーマがあるため、単にかわいい犬との生活という内容でなく、どちらかといえばブリーダーの生活ドキュメントといった作風。日々の食事やトイレ関係、忙しいなかでの散歩など、犬と暮らす責任のような部分がしっかり描かれている。ドキュメント寄りの内容ということで、犬が喋る場面もかなり少なめ。“犬と暮らす人”を描いた作品といっていいだろう。ちなみに、他作では自身の体をタコなどにしている柴田だが、本作では6等身の普通の人間の姿に。昔からの読者にはちょっと新鮮かも。
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