少年誌ラブコメの論理を拒絶する河合作品の世界——『とめはねっ!鈴里高校書道部』(河合克敏)

 河合克敏という人は、僕にとってはちょっと変わった作家だ。いや、スポーツマンガとしては『帯をギュッとね!』も『モンキーターン』も十分王道の部類に入ると思うのだけれども、そうではなく、少年誌ラブコメの担い手としての河合克敏が、である。

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11歳の夏、少年と少女が結ぶ、果たされない約束の美しさ——「神様がうそをつく。」(尾崎かおり)

どんなに天気がよくても、さすような日差しはなくなり、すっかり秋という感じになった。だけど、今年はこのタイミングでゆく夏を惜しむような作品に出会えた。「神様がうそをつく。」(尾崎かおり)だ。

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「愛の才能」とは何なのか? 川本真琴と思春期のピュアネスをめぐって——「17歳℃」(麦盛なぎ)

純愛路線が花盛りになった00年代以降、中学生、高校生の恋物語は数多く描かれているが、思春期の恋模様をきちんと描く作品は、実はあまりなかったと思う。何年か前からここを描いてきたのが「溺れる花火」「ヒメゴト~十九歳の制服~」の峰浪りょうであり、近いところをめぐっているのが「惡の華」の押見修造だろう。そして、今、新たに現れたのが「17歳℃」の麦盛なぎだ。

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「かわいい」以上に「かっこいい」、少女たちによる少年マンガ——「かげきしょうじょ!」(斉木久美子)

魅力を語られれば頭ではわかるけど、体感としてその熱量を理解するのは難しいというジャンルがある。僕にとっては、BLと宝塚だ。このジャンルに関しては、たぶん同じように感じている男性も多いんじゃないかと思う。ほかのジャンル、エンタメコンテンツと比べても、極めてピーキーに女性向けのチューニングがなされている、“THE 女の世界”だと思う。

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2人のソルシエ、2つの予感……今この瞬間だけの特別な光——「さよならソルシエ」(穂積)

若手と呼ばれる人間の最大の魅力は「予感」だ。何かすごいことが始まりそう、見たことのないものが出てきそう……そういうまだ形になっていない予感そのものが、人を強烈に惹きつける。それはときとして完成されたもの以上に強烈な引力を持つ場合すらある。

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正しい青春劇は“ジャンプイズム”と対立する——「クロス・マネジ」(KAITO)

誤解を恐れずにいうならば、「クロス・マネジ」(KAITO)は、本来ジャンプ作品ではない。

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「強敵(とも)」のスピリットを受け継ぐ文系スポ根少女マンガ——「星空のカラス」(モリエサトシ)

「文系スポ根」というジャンルは、マンガの世界では完全に定着した。このジャンルのパイオニアである、百人一首をテーマにした「ちはやふる」(末次由紀)をはじめ、将棋、音楽、クイズなどなど、多種多様なモチーフで、しかも男性誌・女性誌を問わず描かれている。

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悲劇の上を走る、軽やかな喜劇——「あるみちゃんの学習帳」(金田一蓮十郎)

金田一蓮十郎作品は、一言でいうとメドローアだ。

メドローアは、「DRAGON QUEST ダイの大冒険」(原作:三条陸/漫画:稲田浩司/監修:堀井雄二)に出てきたオリジナル魔法で、火の魔法・メラと氷の魔法・ヒャドをぶつけることで、とんでもない威力がどうたらこうたらという少年誌らしいハッタリとワクワク感のある呪文だ。ベクトルの違う2つを掛け合わせるこの呪文は「センスがない奴は一生できない」と説明されている。

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1周まわってかっこ悪くなったロックを、もう1周させるギャグセンス——「エバタのロック」(室井大資)

この間、Twitterで中学生だか高校生だかの息子にBOOWYのPVを見せたら爆笑されたっていう父親の投稿を見て、衝撃とまではいわないけれど、ああ、なるほどなと思った。

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エヴァ世代のための“白川コンプレックス”——「ケンガイ」(大瑛ユキオ)

90年代後半の「新世紀エヴァンゲリオン」ブームは僕らに強烈な傷跡を残していった。ここでいう“傷跡”というのは、作品そのものが与えるトラウマではない(もちろんそういうものもあるんだけど)。コミュニティ、クラスタにおける不安だ。

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