この間、Twitterで中学生だか高校生だかの息子にBOOWYのPVを見せたら爆笑されたっていう父親の投稿を見て、衝撃とまではいわないけれど、ああ、なるほどなと思った。
「バクマン。」(原作:大場つぐみ/作画:小畑健)でシリアスなギャグという概念が提示されたけれど、たぶんロックンロールというやつは、今そういう状態なんだと思う。クールでエッジで最先端だったロックンロールは、今一周まわってギャグになってるのだ。それは「デトロイト・メタル・シティ」(若杉公徳)がデスメタルも渋谷系もギャグとして見せたのとたぶん一緒なのだろう。
「エバタのロック」(室井大資)も、そういう文脈の上にある作品だ。80年代から走り続ける大物ロックスター・エバタと、そのマネージャー・マサトたち周囲の人間を描いたギャグである本作は、ロックが正面切ってかっこよかった時代にはたぶん成立しなかっただろう。
1巻カバーに描かれた「OK。ロックをしようぜ。」というセリフの不思議な脱力感は(室井大資のギャグセンスをうまく抽出できているとは言いがたいが)、ロックの立ち位置を表現している。ただ風に吹かれるPVに物足りなくなって、最大風速60mの強風に挑んだり、ステージから飛び降りようとしたりするエバタの姿は、やっぱりギャグなのだ。
だが、「エバタのロック」の不思議さは、どう見たってギャグなエバタの行動が、時折すごくかっこよく見える点だ。決してシリアスな話ではないし、しっかり笑える。だけど、笑えるはずのエバタはかっこいい。
それは、適当を徹底することでかっこよくなってしまった高田純次や、かっこ悪いこともキレキレにこなして最高にクールになった郷ひろみの姿に似ている。1周まわってギャグになったロックンロールは、「エバタのロック」でもう1周まわってかっこよくなっているのだ。
(このレビューは第1巻時点のものです)
記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。最近、読むナビさんでオススメ紹介を始めました。Twitterアカウントは@frog88。
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