読んだ瞬間「あ、この作者、病気だな」とわかる作品があるけれど、久々にカバーと帯を見ただけで「早急に治療が必要だな」と思える作品に出会えた。「この○○がエロい!!」(金平守人)だ。
本作は「本来はエロくないんだけど、なんだかちょっとエッチな気がしてしまう言葉や物、シチュエーション」を延々紹介するマンガだ。そんなわけで、カバーから「まつたけのけんちん汁」とか「オクタビアヌス(※編注:BC63~AC14。初代ローマ帝国皇帝)」とかいう単語が並んでいる。で、帯は「こんなまんがですが、どうかおめこぼしください!!」。
当サイトの名誉のために断っておくが、強調しているのは僕ではない。帯でその部分だけサイズを上げてあるのだ。
清純派で知られる僕には、どういう意図があってこういうデザインにしてあるのか見当も付かないのだが、大の大人である作者と編集者とデザイナーが電話とかで「お疲れ様です。帯のデザイン、ありがとうございます。で、この『おめこ』の部分、もうちょっとわかりやすく強調したいのですけど、『おめこ』のサイズを上げたパターンと『おめこ』だけ色を変えたパターン、どっちがいいと思います?」とかマジメに相談して、会議とかでも『おめこ』の強調具合とかを議論したんだろうな、と思うと、読む前から熱いものがこみ上げてくる。なんて一生懸命で誠実なバカなんだ。もうこの点だけでも、読者は2~3冊買って関わった人間全員の労をねぎらうだけの価値があると思う。
ただ、「日常のエロフレーズ」なんていうのはベタといえばベタで、店頭で見かける分には笑えるけど、いざ買って自宅でひとりのときに読んだりすると、冷めてしまうことがある。「俺は……なぜこんな無駄な時間を……」とか涙しかねない気持ちになるのだ。
が、本作は振り切ってる。「冷静になったら負けだ」ということをよくわかっている。終始ハイテンション。しかも、ネタに対する躊躇もない。「女子アナ(女子穴)」とかはともかく、固有商品名も固有人名もゴリゴリ攻める。
「商業誌における風刺チキンレースは読者にとってたまらない魅力だ」という話を以前にも書いたが、風刺ではないにせよ、本作の攻め方は男気を感じさせる踏み込みっぷりだ。というか、「まんだひさこ」はよくて「速●もこみち」は一応伏せておこうと考えた、そのジャッジ基準がわからない。わかんないけど、「ヤンチャンは何か底知れぬものを感じさせる雑誌だな」と思わせてくれる。
とまぁ、内容についてちゃんと説明できているのか、非常に不安な紹介なわけだが、おおむねこの作品のノリは伝わったんじゃないかと思う。これを読んで「おもしろそう! 週末はこの作品を買ってきて泣こう!」とか考える人はいないはずだから、よしとしよう。
そんなわけで、ネルヤ編集部は「この○○がエロい!」を応援しております。ひとりでも多くの人がこの本を購入していろんな意味で幸せになるといいと思う。あと、作者の金平先生とヤングチャンピオン編集部は一刻も早く病院へ行った方がいい。
記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。寝室のクーラーが壊れたので、寝るときは窓を開けていたんですが、おかげで寝室側のマンガが湿気にやられつつあります。Twitterアカウントは@frog88。
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