争点はどこなのか? ヤマザキマリ担当弁護士によるコメントも出された映画「テルマエ」原作使用料をめぐる10日間


3日、TLで話題を呼び続けてきた、映画「テルマエ・ロマエ」の原作使用料問題について、原作漫画の作者・ヤマザキマリ氏の代理人を務める四宮隆史弁護士がコメントを発表した。同コメントで四宮氏は、マンガ「テルマエ・ロマエ」の権利関係について整理するとともに、映画を手がけたフジテレビに批判が寄せられていることに対し、ヤマザキ氏が「心を痛めて」いるとしている。

この話題の発端になったのは、2月23日に放送されたテレビ番組「ジョブチューン」。同番組でヤマザキ氏は「テルマエ・ロマエ」の映画化に際して受け取った原作使用料が100万円であったこと、映画化と原作使用料についても決定後に出版社から報告を受けたことを明かした。

この告白には、いくつかの争点が含まれているが、とりわけ、大ヒットした映画版の58億円という興行収入と比較した場合、原作使用料の割合が小さい点が多くの視聴者、ユーザーに衝撃を与え、金額面を中心にTwitter、掲示板などで物議を醸した。

ニュースなどにも取り上げられ、反響が大きくなった2月26日、ヤマザキ氏はTwitterで「日本を離れる前にこれだけツイートしておこう」と切り出し、「要は私だけではなく家族にまで憶測皮算用の迷惑が掛かるのが耐えらなかった」と心中を明かすと同時に、「日本は欧米に比べて著作者側の権利が弱過ぎる」「漫画家は鶴の恩返しの様に精神力と体力削って作業しているのだから、その権利はもっと尊重されて然り」と語った。

いったんはこのつぶやきで「著作権料の件に関してのツイートはいろいろ面倒臭いのでもうしません」としたヤマザキ氏だったが、よく27日にはマンガ家のとり・みき氏が日経ビジネスonlineにおける連載で「青春の怒りとカネ」と題した文章を発表。自作品のメディア化経験を引き合いにしつつ、金銭面というよりも、出版社と作家の特殊な関係性について語った。

これを受け、ヤマザキ氏は改めて「日本には著作権をプロテクトしてくれる専門の弁護士すらそんなに居ません」というマンガ家・作家と著作権をめぐる状況についてコメント。「そろそろ発展途上状態から逸脱して欲しいです」と、権利問題を焦点にして、自身の思いを語っている。

この段階になると、マンガ家らの間でもいっそう反響は大きくなっており、「都立水商!」(原作:室積光)のコミカライズを手がけた猪熊しのぶ氏は、マンガ版オリジナルキャラクターも登場する同作のドラマ版に関して、自身に版権使用料が支払われていないことを明かしている。猪熊氏のケースでは、当初は作品のクレジットにも名前が入っていなかったとのことで、担当編集者の抗議もあって、権利料は発生しなかったものの、「原案協力」という形でクレジットだけはされたという経緯を語った。

こうしたメディア化の話に端を発した作家の権利と商習慣問題がTLで物議を醸すなか発表されたのが、今回の四宮弁護士によるコメントだ。

四宮氏のコメントによると、マンガ「テルマエ・ロマエ」は、映画化をはじめとする二次利用に際して、出版社が窓口となって交渉する権利を持っており、作者のヤマザキ氏が二次利用者と直接交渉することはできないことになっているといい、「ヤマザキ氏がフジテレビとの交渉に破れた結果、原作使用料が低額になった」という言説を否定している。

さらに、金額自体が大きな話題を呼んだ一方で、ヤマザキ氏が金額に不満を抱いているわけではないことを説明し、「なぜ100万円なのか?」といった交渉や契約経緯についての説明が不十分であった点を争点にしていることを改めて強調している。

また、同コメントでは、伝統的な出版社と作家の関係から、電子化や著作隣接権といった現在の出版業をめぐる変化などにも言及。法的関係以上に、出版社と作家のコミュニケーションの重要性を訴えている。

四宮氏のコメントは、同氏が代表を務めるE&R総合法律会計事務所のホームページ上のほか、ヤマザキ氏のブログにも掲載されており、同ブログだけでも、5日時点で1700件を超えるTwitterでの言及がなされている。

記事:ネルヤ編集部

関連リンク
ヤマザキマリ・シカゴで漫画描き Mari Yamazaki’s Blog
エンターブレイン BEAM COMIX「テルマエ・ロマエ」公式サイト
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