推理とかミステリーを期待するべからず! このホームズが挑むのは「地面に人が突き刺さってる」事件とかだから!!——「ほぼ在宅探偵ホームズ」(青色イリコ)


読む前のイメージと読んだあとの感想が大きく違う作品というのがある。よい意味でも悪い意味でも使うが、いわゆる「裏切られる」というやつだ。「ほぼ在宅探偵ホームズ」(青色イリコ)は、僕にとってはそういう作品だった。

青色イリコは“おバカ”の人だ。いや、作者がバカだという話ではまったくなく、“おバカ”を描く人という意味だ。大人になってみると不思議な中学生時代の文化にスポットを当て、ハイテンションかつ微笑ましく女子中学生たちを描いた、青色の前作「ハナチュウ」も読んでいたので、さすがにガチガチのミステリーが出てくると思っていたわけではない。

ただ、おバカ系といっても探偵と銘打ってきているわけだから、まぁ、何かこう人間としてはダメだけど、頭は冴える困った名探偵が活躍するコメディなのかなと、そんなふうに思っていたわけです。あるでしょ? そういうの。だって「探偵」ってタイトルに入ってるんだから。

で、読んでみたら、推理とか別にしてなかった。むしろこれはダメ人間ギャグ……!

もちろん探偵は出てくる。ちゃんと主役を張っている。タイトルにも入っているとおり、基本ひきこもりで外に出たがらない探偵・ホームズ(日本人)が毎回不可思議な事件の解決に挑むというのも事実だ。

だが、その事件がひどい。初回こそ「公園にある裸婦の銅像にランジェリーを着せた犯人を捜す」という、比較的まともな(?)探偵ぶりを見せていたのだが、第2話で起こる事件とか「公園で地面に頭から刺さってる人がいる」だからね。うーん、何を言っているのかわからないと思うからもう1回書いておくね。第2話で起こるのは「地面に頭から突き刺さってる人がいる」事件。これ。

この段階で我々は気付くわけです。「ああ、トリックとか推理とか期待しちゃダメなんだな」と。「そもそもホームズ、基本的に毎回何もしないしな」と。むしろ、「暗闇で携帯のカメラをかまえると、盗撮用カメラの赤外線が見える」とか探偵っぽい豆知識を挟んでくるところに違和感を感じるようになる。

だから、あなたのまわりにミステリーが好きで、昨今流行の「日常の謎を解いていくゆるふわミステリー」とかを読みたいと思っている人がいたら、まず本作を買わないようにと注意しておくべきだ。違うから。そういうんじゃない。

が、逆に「推理とかどうでもいいけど、バカギャグが読みたい」「できればキャラはかわいげがあったほうがいい」というような人には、即この作品を薦めるべきだ。毎回頭のおかしい展開や、パロディ系のギャグがてんこ盛りだし、大人げないホームズのダメっぷりやワトソンくんの容赦ないツッコミはハマるとたまらない。ギャグ好きの人はぜひチェックしてほしい1作だ。

記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。インフルエンザにかかりました。Twitterアカウントは@frog88

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