2014年のバカ男子ギャグの本命か? “マクドナルドの女子高生”スタイルの会話盗み聞きギャグ——「高橋さんが聞いている。」(北欧ゆう)


「大人気!!」とか「大反響!!」とか「全米が泣いた」とか、定番のあおり文句というのはいろいろある。だが、出版社のあおり文句は5割引くらいで見るのが基本だ。よくいわれる笑い話に「週刊誌に第2話が載った時点で『早くも大人気!!』というあおりが入っていた」なんていうのがあるが(週刊誌で第2話の校了までにアンケート結果が出ることは基本ない)、まぁ、売り文句なので何割かは引いてみるのがバランス感覚というものだ。

ところが、ごくたまに「あ、これガチだ」っていうあおり文句に出会うこともある。「高橋さんが聞いている。」(北欧ゆう)は、まさにそのパターンだった。

本作第1巻の帯には「次に来るギャグマンガはこれ!!」というあおり文句が入っているのだが、この手のキャッチは要するに「次に来るギャグマンガはこれ(だといいなあ)」という編集部の願望だ。もうちょっと意地悪にいえば、「まだ来てないんだろ?」ともいえる。

なので、今回も「どうだろうな」と思って手に取ったのだが……これは本当に来るかもしれない。

「高橋さんが聞いている。」は、女子高生アイドル・高橋エナの日常を描いたギャグだ。なのだが、本作の主役は高橋さんではなく、クラスメイトの男子、奈良くんと御影くん。この2人の会話をこっそり聞いて楽しむのが、高橋さんの趣味なのだ。Twitterなどでおなじみのネタフォーマットに「マクドナルドで女子高生が話してたんだけど」というのがあるが、他人の会話というのは確かによく聞いているとすごいものがある。

この2人の会話も強烈だ。第1話では「人生ギリギリアウトくらいが丁度いい」というセリフを、教科書にも載っているくらい有名な小説か何かで読んだという話から始まるのだが、「教科書・有名作」というキーワードから2人がたどり着いたのは「ごんぎつね」。

おい、いつから「ごんぎつね」、そんなハードボイルド小説になったんだよ。花村萬月か誰かがカバーしたのかよ!とか思っている間にも会話は進み、微妙にコレジャナイ感あふれる「ごんぎつね」トークが繰り広げられていく。

そして、高橋さんはそれに心の中で激しくツッコミを入れていくが、あくまで盗み聞きをしている立場なので、決して2人の会話には立ち入らない。ツッコミはあるけれど、決して止まらないボケの特急列車感が本作の味になっている。

このボケの投げっぱなしジャーマン感は、「となりの関くん」(森繁拓真)に通じるところがある。この作品の場合は、授業中に理解不能なひとり遊びを繰り広げる関くんと、それを注意しようとしつつ夢中になる横井さんという構図だが、やはりここでも基本的に、横井さんのツッコミは心の中だけで、関くんワールドは止まることなく淡々と広がっていく。

男子のバカっぽさは、「男子高校生の日常」(山内泰延)など、スクエニ系ギャグのお家芸。これは本当に、来年から再来年にかけてブレイクしそうな期待作だ。

(このレビューは第1巻時点のものです)

記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。年間のマンガ購入量はだいたい1000冊ほど。特に好きなのはラブコメです。Twitterアカウントは@frog88

関連リンク
高橋さんが聞いている。 – 連載作品 – ガンガンJOKER -SQUARE ENIX-

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