おちんちんのために生き、おちんちんによって生かされている、ウンコちんちん系ギャグのお手本——「いきいきごんぼ」(陸井栄史)


実は今回のレビューは、途中まで書いてから1回全部書き直している。最初に書いた原稿は、90年代からのシュール系ギャグの席巻やら、ギャグマンガを分類する2軸など、割とマジメに長めの文章を書いていたのだが、最終的に全部捨てた。

なにしろ、どんなにマジメに書いても、というよりマジメに書けば書くほど、空虚な気持ちになるのだ。だって、今回取り上げる「いきいきごんぼ」(陸井栄史)、秋田書店のお家芸ともいえる、ウンコちんちん系ギャグなんだもの。

「ウンコちんちん」というのは、とにかく由緒正しいギャグだ。小学生とかが相手であれば、困ったらとにかく「ウンコ」といっておけばいい。それでどうにかなる。いつ頃からギャグフレーズとして定着したのかわからないが、とにかくかなり長い間国民的ギャグとして機能してきたのは間違いない。「サザエさん」「ドラえもん」「ウンコちんちん」くらいの並びでもいいと思う。

が、「ウンコちんちん」というのは、語るべき言葉がない。ウンコにはウンコ以上の意味がないのだから。基本的にテクニック的な笑いでなく、原始的ギャグだ。レベルを上げて物理で殴る感じ。解説する分だけむなしさを感じてしまう。

だから、思春期のバカ男子中学生たちを主人公にして、直球下ネタをぶち込んでくる本作についても、語るべき言葉はないのだ。どうしてもいうなら、登場人物の一人吏毘堂が作中で放った「人はおちんちんのために生き おちんちんによって生かされているんだ!!」というセリフを紹介するしかない。

もちろん意外と渋いパロディネタを突っ込んできているのもわかる。三峰徹ネタとかを巧みに組み込んでくるあたりにも、センスというか執念じみたものを感じる。が、そんなことは最終的にどうでもいい。

おちんちんのために生き、おちんちんによって生かされている作品にとって、そんなことは些細なことなのだ。こういう腕力の前に、言葉は無力だ。

作者のセンスもすごいが、こういう作品を掘り当てる秋田書店のウンコちんちん力はさすがとしかいいようがない。

(このレビューは第1巻時点のものです)

記事:小林聖
フリーライター。ネルヤ編集長。最近、読むナビさんでオススメ紹介を始めました。Twitterアカウントは@frog88

関連リンク
週刊少年チャンピオン詳細|秋田書店

No comments yet.

この記事にコメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)