編集長の“今月はコレにハマった!”(2012年12月)


1か月にレビューした作品のなかから、ネルヤ編集長・小林が独断と偏見で特にハマったものを厳選してピックアップ。年末年始のどさくさに紛れて完全にピックアップを忘れていた12月のハマり作品を(ようやく)ご紹介!

“ニューウェイブ”という想像力とポスト3.11——「変身のニュース」(宮崎夏次系)


小林:2013年に注目を集めそうな作家のひとりだとは思っていましたが、#俺マン2012 の段階で早くも9位にマークするのは予想外でしたね。パワーと勢いのある作家さんだなぁと改めて思いました。

40年後の東京を社会システムからデザインする想像力――「なりひらばし電器商店」(岩岡ヒサエ)


小林:もはや岩岡ヒサエの線を見るだけでグッと来てしまうほど好きなのですが、彼女のやわらかで温かい視線に意識が集中しがちななか、その想像力が政治の域にまで入って具体化し始めたという点で、「なりひらばし~」はひとつのマイルストーンのような作品なんじゃないかと感じています。

グルメマンガだと思った? 残念、「実録・東村アキコ伝説」でした!――「いいなりゴハン」(森繁拓真)


小林:かつて天才ジョッキー・武豊がルーキー時代に「いつか(当時武豊よりも圧倒的に知名度が高かった父)“武邦彦の息子”でなく、(邦彦を)“武豊の父”だといわせたい」と語った話は有名ですが、あまりに有名な(同業の)人間が親族にいるというのは武器であり、ハンディでもあるわけです。が、そのハンディともいえる巨大な姉・東村アキコをこう使ったか、というのはやっぱり森繁拓真はすごいなと思うわけです。面白いわぁ、森繁拓真の描く東村アキコ。

水谷フーカとラジオという幸福なカップル――「満ちても欠けても」(水谷フーカ)


小林:「GAME OVER」「14歳の恋」と白泉社・楽園を中心に、ニヤニヤ感と初々しさがたまらない作品を連発してきた水谷フーカが講談社・Kissでスタートさせた新作。恋模様の部分は抑えめながら、水谷らしい幸福感に充ち満ちていて、いつまでも読んでいたくなる作品ですね。

闇雲にインターフォンを押す覚悟と蛮勇――「誰がそれを 田中相短編集」(田中相)


小林:実をいうと田中相の出世作というべき「地上はポケットの中の庭」が、個人的にはいまいちピンときていなかったんですが、「千年万年りんごの子」でグッとつかまれました。「誰がそれを」はようやく見え始めた田中相の魅力を、何となく自分のなかで具体化することができた作品集でもあります。

毒っ気たっぷりの女子高生たちを貫く神秘性――「平成生まれ」(ハトポポコ)


小林:ここからは新規刊行作品ではないのですが。個人的なことをいうと、2012年は遅ればせながら、ようやくボチボチといわゆる4コマ誌の作品群に手を出し始めた年でして、なかでも「平成生まれ」はかなりツボだった作品のひとつ。今年はもう少し4コマ誌の作品について語れる言葉を増やしていきたいですね。決意表明しかしてない、このテキスト。

他人のための夢を見させてくれる、大人のためのおとぎ話――「歌うたいの黒うさぎ」(石井まゆみ)


小林:こちらも新規刊行作ではないですが、取り上げたのが12月だったので。「キャリアこぎつね」シリーズが社会人・母・女といった女性の複数のレイヤーを一気に重ね合わせて解きほぐしていくような作品だったとしたら、「歌うたい~」は(少なくとも今のところ)もっとシンプルに楽園へと誘ってくれる大人のおとぎ話のような作品。というと、子どもだましみたいに思えるけど、ワクワクッとしたワンダーランド感があるんですよね。読んでいて本当に楽しい。

記事:ネルヤ編集部

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編集長の“今月はコレにハマった!”(2012年11月)

関連リンク
モーニング公式サイト – 『変身のニュース』作品情報
イブニング|なりひらばし電器商店|作品紹介|講談社コミックプラス
森繁拓真 いいなりゴハン | ジャンプ改 公式サイト
Kiss|満ちても欠けても|作品紹介|講談社コミックプラス
|誰がそれを −田中相短篇集−|作品紹介|講談社コミックプラス
まんがタイムきらら – 作品紹介ページ – まんがタイムきららWeb
◆連載作品紹介◆月刊YOU(「歌うたいの黒うさぎ」)

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