10年代の人外系マンガはどう変遷したのか?——猫耳化する萌え系人外と獣人化する人外彼氏

 一般商業誌における人外マンガブームというのがいわれるようになって久しい。いわれるようになってというか、僕を含めた一部の人たちが「ブームだ」といいだしてからといった方がいいかもしれないが、アニメ放送開始を目前に控えた『モンスター娘のいる日常』(オカヤド)といったヒット作を筆頭に、いわゆる人外系が増えた、「人外系」というフレーズが定着した感はある。

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少年誌ラブコメの論理を拒絶する河合作品の世界——『とめはねっ!鈴里高校書道部』(河合克敏)

 河合克敏という人は、僕にとってはちょっと変わった作家だ。いや、スポーツマンガとしては『帯をギュッとね!』も『モンキーターン』も十分王道の部類に入ると思うのだけれども、そうではなく、少年誌ラブコメの担い手としての河合克敏が、である。

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スカート男子高校生・桃井くんの自由が大人世代にもたらすもの——『ボーイ★スカート』(鳥野しの)

 読み終わったあと、改めて『ボーイ★スカート』(鳥野しの)のカバーを眺めたとき、なんだかふと「民衆を導く自由の女神」の絵を思い出した。フランス国旗を掲げ、革命を先導する女性のあの絵だ。スカートを履く少年の姿は颯爽としていて、美しい自由をはためかせているように見えたのだ。

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東京という限界集落を生きる彼女たち——『東京タラレバ娘』(東村アキコ)

いわゆる女性マンガにおいて、独身アラサー/アラフォーというテーマはここ数年(といってももう5年以上の単位で)定番のひとつになっている。シリアスに現実を描き出そうとするものもあれば、コメディとして描くものもあるし、その年齢層向けに少女マンガ的な夢を与え直そうとするアプローチもある。作家でいえば、西炯子がいて、渡辺ペコがいて、今ど真ん中にはたぶん鳥飼茜がいる。鴨居まさねや入江喜和も大きな枠組みでは周辺にいる。

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オシャレな新・不倫恋愛マンガが出てきたと思うだろ? 残念、童貞向けバカマンガでした!!——「フリンジマン」(青木U平)

パステルカラーのおしゃれ系カバーに、「学べる愛人の作り方」という帯、おそらく「不倫・自慢」とかけているであろう「フリンジマン」というタイトル。これはまたちょっと大人系の恋愛マンガが出てきたのかなーと思って手に取った。結果、完全に騙された。

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ありきたりさの先にある無二のドラマ性——「四谷区花園町」(高浜寛)

ドラマチックな物語というのは、それだけで人を惹きつける。見事なドラマ性をつくれれば、その物語は名作になり得るといっていいだろう。だが、じゃあ、ドラマチックでない物語は、面白くないのだろうか?

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すべての彼氏はトドである。ケモナー系の形をしたアラサーカップル共感マンガ——「トド彼」(高嶋あがさ)

2011年のケンタウロスマンガブーム以降なのか、「モンスター娘のいる日常」(オカヤド)の快進撃以降なのか、それともそれ以前からの定番とみるか、どこを契機とするかは難しいが、ここ数年で、一般商業誌における人外系作品、ケモナー向け作品の存在感は確実に増してきている。

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11歳の夏、少年と少女が結ぶ、果たされない約束の美しさ——「神様がうそをつく。」(尾崎かおり)

どんなに天気がよくても、さすような日差しはなくなり、すっかり秋という感じになった。だけど、今年はこのタイミングでゆく夏を惜しむような作品に出会えた。「神様がうそをつく。」(尾崎かおり)だ。

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ネガティブ巨人と上からメガネ、凸凹カップルラブコメは「ラブ★コン」からどう変わったか?——「ハル×キヨ」(オザキアキラ)

高身長女子というのが、今年のプチトレンドのひとつだった。身長181cmの中学生・富士山さんを描く「富士山さんは思春期」(オジロマコト)、ちょっぴり背の高い内気な女の子・卯多子を主人公にした「Stand up!」(山川あいじ)と、立て続けに高身長女子ものが刊行開始。そして、さらに今回取り上げる「ハル×キヨ」(オザキアキラ)だ。

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元ホストの園長を描く育児マンガは、実は教師ものなのかも——「赤ちゃんのホスト」(丘上あい)

00年代のマンガの大きなトレンドとして、子育てマンガというのがある。実録系のエッセイを中心に、数々のヒット作が生まれた。背景には少子化・核家族化によって自身の出産・子育てが、初めての育児体験という人が多くなったこととか、働きながらの育児という状況の増加、女性作家自体の増加など、いろいろな要因があるんだと思う。

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ショタにしてショタにあらず! イケメンが縄跳びをする異形のピュアラブストーリー――「初恋モンスター」(日吉丸晃)

年に何度かなのだけれども、明らかに「冷静さを欠いている」作品に出会うことがある。作品自体が熱いとかドジッ子を描いてるとか、そういう意味ではない。打ち合わせ段階でどういうプロセスを経たのかわからないけど、「GO」という判断が下されたとき、少なからず関わった全員が冷静さを欠いていただろうな、と思わせる作品だ。

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「愛の才能」とは何なのか? 川本真琴と思春期のピュアネスをめぐって——「17歳℃」(麦盛なぎ)

純愛路線が花盛りになった00年代以降、中学生、高校生の恋物語は数多く描かれているが、思春期の恋模様をきちんと描く作品は、実はあまりなかったと思う。何年か前からここを描いてきたのが「溺れる花火」「ヒメゴト~十九歳の制服~」の峰浪りょうであり、近いところをめぐっているのが「惡の華」の押見修造だろう。そして、今、新たに現れたのが「17歳℃」の麦盛なぎだ。

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恋が解き明かされる瞬間の鮮やかさ——「透明人間の恋」(安藤ゆき)

恋愛マンガというジャンルは、基本的に冒頭を見た瞬間にラストがわかるようになっている。もちろん、あらすじが詳細にわかるわけじゃないけど、最終的に誰と誰がくっつく話なのかはわかるし、わかるように作られている。

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メイクがくれる「身の丈」を超える勇気――「リメイク」(六多いくみ)

「身の丈を知る」っていうのは大事なことだ。無根拠な自信と肥大化したプライドを持つ続けたまま生きていくっていうのは、できるかもしれないけど、並大抵のことではない。けど、身の丈を知って、大人になった頃、偉い人たちから「身の程なんて知らなくていい!」なんてメッセージを受けたりする。「小さくまとまるな」というやつだ。思い返すと、僕も「じゃあ、結局どうすりゃいいのよ」と、随分戸惑ったり苛立ったりしてた気がする。

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悲劇の上を走る、軽やかな喜劇——「あるみちゃんの学習帳」(金田一蓮十郎)

金田一蓮十郎作品は、一言でいうとメドローアだ。

メドローアは、「DRAGON QUEST ダイの大冒険」(原作:三条陸/漫画:稲田浩司/監修:堀井雄二)に出てきたオリジナル魔法で、火の魔法・メラと氷の魔法・ヒャドをぶつけることで、とんでもない威力がどうたらこうたらという少年誌らしいハッタリとワクワク感のある呪文だ。ベクトルの違う2つを掛け合わせるこの呪文は「センスがない奴は一生できない」と説明されている。

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同棲相手はホワイトボード!? 「見えない」とは最強の萌えなのかもしれない——「のぼさんとカノジョ?」(モリコロス)

「萌え」は、猫耳やアホ毛、ツインテール、メガネッ子など、記号化・定型化文化とともに進化してきたという側面がある。ある意味では、現実以上にビジュアルが担っている意味は大きいかもしれない。だが、「のぼさんとカノジョ?」(モリコロス)は、そのまるで逆の方法で強烈な「かわいさ」を演出している。

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本物の家族でないからこそ、かけがえのない瞬間がある——「箱庭へブン」(羽柴麻央)

羽柴麻央という人は、長いこと少女を描く人だった。キャラクターが実際に少女だということでもあるが、それ以上に“少女らしい繊細な感性”を描く人という印象だったということだ。

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エヴァ世代のための“白川コンプレックス”——「ケンガイ」(大瑛ユキオ)

90年代後半の「新世紀エヴァンゲリオン」ブームは僕らに強烈な傷跡を残していった。ここでいう“傷跡”というのは、作品そのものが与えるトラウマではない(もちろんそういうものもあるんだけど)。コミュニティ、クラスタにおける不安だ。

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初恋の鮮烈な匂いを漂わせるセンシティブなルーキー——「僕らのポラリス」(藤井亜矢)

「めぞん一刻」(高橋留美子)で、ヒロインである響子さんがあるときこんなことを語るシーンがある。「あなたはいいわよね、八神さん。だって…まだひとりしか好きになったことないんでしょ。」。

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「パンツは布であり、同時に下着である」を理解できない不器用な男のバカバカしいかわいさ——「夜の須田課長」(クマザワミキコ)

家族とセックスするというのは難しい。現実問題としてできるかできないかというのは、嫁や子どもはおろか、彼女もいない僕には踏み込めない問題なのだけれども、少なくとも物語、理念モデルとしての恋愛、もしくはセックスというものは、家族とは相性が悪い。

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「めでたしめでたし」を許さない冷徹さ——「きのう何食べた?」(よしながふみ)

よしながふみの作品には常に悲劇の匂いがしている。壮大な男女逆転時代劇である「大奥」にせよ、白血病を乗り越えて復学した高校生の青春を描く「フラワー・オブ・ライフ」にせよ、BL作品群にせよ、本人が選択できない何かを背負わされた人々を、よしながは描き続けている。

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水谷フーカとラジオという幸福なカップル――「満ちても欠けても」(水谷フーカ)


「満ちても欠けても」(水谷フーカ)
ハートフル:★★★★½
恋愛:★★★★☆
ラジオ愛:★★★★★

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少女の上位概念としての「男の娘」——「君の中の少年思考」(金子歩)

「君の中の少年思考」(金子歩)1巻の帯には「ノンケの君にバーン!」というフレーズが入れられている。そう、本作は「エロ大臣」と呼ばれる男子高生の反町と、男の娘系の同級生(男)のラブストーリーなのだ。

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