世界の終わりとシュールギャグ……悲しいときは「オンノジ」を思い出そう——「オンノジ」(施川ユウキ)

「最近のオススメは?」と100人に聞かれて、100人にとはいわないまでも、80人か90人くらいには自信を持って薦められる作品というのがある。もちろんそれは素晴らしい作品だ。だけど、じゃあ、あくまで個人的に、自分が墓場まで持っていきたい作品は何かと聞かれたら、案外そういう作品じゃなかったりすることがある。

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アラサーの新たな旗手が描く、「29歳の自由」という不幸——「おんなのいえ」(鳥飼茜)

何年くらい前からだろう。アラサー女子という世代を、多くの女性作家が描くようになった。そして、そういう作家たちのなかで、今もっとも不確かな不安を的確に突いているのは鳥飼茜だと思う。

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中二病との向き合い方——「とげぬきハトちゃん」(久世番子)

中二病を語るとき、その人もまた中二病に立ち戻っている。そういうことが、実はある。

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新ジャンル:ほのぼの暴力4コマ——「彼とカレット。」(tugeneko)

突然ですが、クイズです。週刊アスキーPLUSで連載中の4コママンガ「彼とカレット。」(tugeneko)はどんな作品でしょう? 次の5つから選んでください。

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「おっかない人」がくれるもの——「アリスと蔵六」(今井哲也)

僕らはときどき「おっかない人」のことを懐かしく思い出すことがある。頑固オヤジや学校の先生、トラディショナルなヤクザの親分……。実際に知っている人かどうかとは無関係に、おっかない人は、どこか僕らを懐かしい気持ちにさせる。

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13歳の少女は、猫と出会って大人になる——「魔女と猫の話」(四宮しの)

少女マンガだな、と思う。「魔女と猫の話」(四宮しの)は、少女マンガの恋ではない部分の遺伝子をしっかりと受け継いでいる。いや、もしかしたら、恋の物語といってもいいかもしれない。

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仕事における「主役」は誰なのか?——「重版出来!」(松田奈緒子)

「脇役にスポットを当てた作品」といわれるドラマはたくさんある。お仕事マンガというジャンルでは、特にそうだ。出版業界を描いた作品でいえば、「働きマン」(安野モヨコ)なんかが一番知られているだろう。そこでは、出版という世界の、いろんなポジションの人間のドラマが描かれている。

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正しい青春劇は“ジャンプイズム”と対立する——「クロス・マネジ」(KAITO)

誤解を恐れずにいうならば、「クロス・マネジ」(KAITO)は、本来ジャンプ作品ではない。

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鳥山明の衣鉢を継ぐ、少年マンガのど真ん中——「七つの大罪」(鈴木央)

昨年の暮れに、マンガ好きの人と2013年の各マンガ誌の話になったとき、「来年は週刊少年マガジンが勢いづくと思う」と言われたことがあった。いろいろ根拠なども聞きつつ、そのときは「ふーん、そうなのか」くらいに思っていたのだけれど、蓋を開けてみたら、本当に今年のマガジンは勢いを感じさせる雑誌になっている。読み切りの「聲の形」(大今良時)が大きな反響を呼び、即連載化が決定したりと、とにかくパワフルな動きが目立っている。

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「強敵(とも)」のスピリットを受け継ぐ文系スポ根少女マンガ——「星空のカラス」(モリエサトシ)

「文系スポ根」というジャンルは、マンガの世界では完全に定着した。このジャンルのパイオニアである、百人一首をテーマにした「ちはやふる」(末次由紀)をはじめ、将棋、音楽、クイズなどなど、多種多様なモチーフで、しかも男性誌・女性誌を問わず描かれている。

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悲劇の上を走る、軽やかな喜劇——「あるみちゃんの学習帳」(金田一蓮十郎)

金田一蓮十郎作品は、一言でいうとメドローアだ。

メドローアは、「DRAGON QUEST ダイの大冒険」(原作:三条陸/漫画:稲田浩司/監修:堀井雄二)に出てきたオリジナル魔法で、火の魔法・メラと氷の魔法・ヒャドをぶつけることで、とんでもない威力がどうたらこうたらという少年誌らしいハッタリとワクワク感のある呪文だ。ベクトルの違う2つを掛け合わせるこの呪文は「センスがない奴は一生できない」と説明されている。

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おちんちんのために生き、おちんちんによって生かされている、ウンコちんちん系ギャグのお手本——「いきいきごんぼ」(陸井栄史)

実は今回のレビューは、途中まで書いてから1回全部書き直している。最初に書いた原稿は、90年代からのシュール系ギャグの席巻やら、ギャグマンガを分類する2軸など、割とマジメに長めの文章を書いていたのだが、最終的に全部捨てた。

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同棲相手はホワイトボード!? 「見えない」とは最強の萌えなのかもしれない——「のぼさんとカノジョ?」(モリコロス)

「萌え」は、猫耳やアホ毛、ツインテール、メガネッ子など、記号化・定型化文化とともに進化してきたという側面がある。ある意味では、現実以上にビジュアルが担っている意味は大きいかもしれない。だが、「のぼさんとカノジョ?」(モリコロス)は、そのまるで逆の方法で強烈な「かわいさ」を演出している。

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本物の家族でないからこそ、かけがえのない瞬間がある——「箱庭へブン」(羽柴麻央)

羽柴麻央という人は、長いこと少女を描く人だった。キャラクターが実際に少女だということでもあるが、それ以上に“少女らしい繊細な感性”を描く人という印象だったということだ。

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“男の妊娠”はフィクションか、それとも現実か?——「ヒヤマケンタロウの妊娠」(坂井恵理)


「ヒヤマケンタロウの妊娠」(坂井恵理)
社会ドラマ:★★★★☆
ハートフル:★★★★☆
SF性:★★☆☆☆

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1周まわってかっこ悪くなったロックを、もう1周させるギャグセンス——「エバタのロック」(室井大資)

この間、Twitterで中学生だか高校生だかの息子にBOOWYのPVを見せたら爆笑されたっていう父親の投稿を見て、衝撃とまではいわないけれど、ああ、なるほどなと思った。

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エヴァ世代のための“白川コンプレックス”——「ケンガイ」(大瑛ユキオ)

90年代後半の「新世紀エヴァンゲリオン」ブームは僕らに強烈な傷跡を残していった。ここでいう“傷跡”というのは、作品そのものが与えるトラウマではない(もちろんそういうものもあるんだけど)。コミュニティ、クラスタにおける不安だ。

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どこへ辿り着くかわからないジェットコースター感! 古典的にして奇手の少年誌ラブコメ——「となりの山田さん」(古閑裕一郎)


「となりの山田さん」(古閑裕一郎)
古典ラブコメ感:★★★★☆
エロハプニング発生度:★★★★½
先の読めなさ:★★★★½

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建て増しされるアキタランドの想像力——「アキタランド・ゴシック」(器械)

「後付けの設定」というのは、通常物語にとってよろしくないことのひとつだ。ご都合主義的にコロコロ変わる世界観は、たいてい整合性を欠きはじめるし、読者の物語への信頼度を下げる。設計図のない建設物みたいなもので、多くの場合うまくいかない。

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初恋の鮮烈な匂いを漂わせるセンシティブなルーキー——「僕らのポラリス」(藤井亜矢)

「めぞん一刻」(高橋留美子)で、ヒロインである響子さんがあるときこんなことを語るシーンがある。「あなたはいいわよね、八神さん。だって…まだひとりしか好きになったことないんでしょ。」。

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「パンツは布であり、同時に下着である」を理解できない不器用な男のバカバカしいかわいさ——「夜の須田課長」(クマザワミキコ)

家族とセックスするというのは難しい。現実問題としてできるかできないかというのは、嫁や子どもはおろか、彼女もいない僕には踏み込めない問題なのだけれども、少なくとも物語、理念モデルとしての恋愛、もしくはセックスというものは、家族とは相性が悪い。

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推理とかミステリーを期待するべからず! このホームズが挑むのは「地面に人が突き刺さってる」事件とかだから!!——「ほぼ在宅探偵ホームズ」(青色イリコ)

読む前のイメージと読んだあとの感想が大きく違う作品というのがある。よい意味でも悪い意味でも使うが、いわゆる「裏切られる」というやつだ。「ほぼ在宅探偵ホームズ」(青色イリコ)は、僕にとってはそういう作品だった。

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闇雲にインターフォンを押す覚悟と蛮勇――「誰がそれを 田中相短編集」(田中相)

本作には「闇雲にインターフォンを押すようなこの仕事が気に入っている」と語る宅配便のドライバーが登場する「THE WORLD」という短編が収録されているが、これはまるで「誰がそれを」を象徴するようなセリフだ。

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「めでたしめでたし」を許さない冷徹さ——「きのう何食べた?」(よしながふみ)

よしながふみの作品には常に悲劇の匂いがしている。壮大な男女逆転時代劇である「大奥」にせよ、白血病を乗り越えて復学した高校生の青春を描く「フラワー・オブ・ライフ」にせよ、BL作品群にせよ、本人が選択できない何かを背負わされた人々を、よしながは描き続けている。

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水谷フーカとラジオという幸福なカップル――「満ちても欠けても」(水谷フーカ)


「満ちても欠けても」(水谷フーカ)
ハートフル:★★★★½
恋愛:★★★★☆
ラジオ愛:★★★★★

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